板尾創路×星田英利の認め合うがゆえの“兄弟喧嘩” 『おちょやん』さまざまな師弟関係
千之助(星田英利)と一平(成田凌)が初めて共同で作った物語『丘の一本杉』が幕を開けた『おちょやん』(NHK総合)第70話。腕はいいけど、喧嘩ばかりしている鍛冶屋の親子のお話だ。
千之助扮する良助は負けず嫌いの頑固おやじ。一平が演じる息子・幸太郎は父の傍若無人な振る舞いに耐えきれず、ついに家出を決意し、一本杉が立つ丘に辿り着く。辺り一帯に根を張る古い杉の木と、長年プライドを持って鍛治職人として働いてきた父の姿を重ね、尊敬の念を思い出す幸太郎。良助もまた足を引きずりながら幸太郎を追い、一本杉の前にやってくるのだった。
「もうやり直すことはできひんのやな。せめて身体だけは丈夫にな」
芝居の最中、因縁の相手である万太郎(板尾創路)を客席に見つけた千之助は彼に向かってそんな台詞を投げかける。万太郎という役者が好きで、万太郎に勝ちたくて、万太郎に認められたくて、役者を続けてきた千之助。袂を分かつことになった2人は互いを意識しながら、それぞれの場所で生き、ようやく真っ向から勝負することができた。万太郎はこの日をずっと待ち望んでいたのではないだろうか。
『丘の一本杉』が描く親子であるのと同時に、師弟関係でもある父と息子の姿は『おちょやん』のあらゆる関係性に当てはまる。万太郎と千之助をはじめ、天海(茂山宗彦)と一平、千之助と一平。不器用な彼らは、ぶつかり合うことでしかコミュニケーションを取ることができない。けれど師匠の方には自分が悪役になってでも、突き放して弟子を育てたいという想いがある。千之助は台本を作り上げる中で、そんな万太郎の愛情に気づいたのだろう。千之助が万太郎に贈った台詞は別れの言葉でもあり、これからも“兄弟喧嘩”をし続けようという宣戦布告でもある。