第19話“神回”の法則が誕生!? 『呪術廻戦』『鬼滅の刃』『まどマギ』の脚本構成から検証

 では、なぜ『鬼滅の刃』も『呪術廻戦』も第19話に話題が集中する神回が当てられたのだろうか? この2作品ともに連続2クールの作品ということが大きい。2クール目、第14話から数え始めると、第19話はちょうど3話構成では6話目(1つのブロックの終わり)であり区切りがいい。また全26話前後と考えた場合、ちょうど中間の位置なので物語を盛り上げたいということもあるだろう。

 同時に、第2クールは第1クールに比べて、物語が長いパートに入りがちだ。第1クールは世界観やキャラクターの説明のために、比較的早く物語が展開してしまう。一方で第2クールはキャラクターも出揃い、大きな事件を描くために、数話かけて放送しなければならない。また後半の12話で見たときに、ちょうど中盤の盛り上がりになりやすいポイントであり、全体の流れを見ても力を入れたいポイントだ。

 そしてアニメとTwitterの相性の良さが、さらにその神回をバズらせていく。アニメや声優。Vtuverなどの話題は、Twitter内でもたびたびトレンド入りを果たしており、世界トレンド1位になることも珍しくない。アニメファンとTwitterの相性がいいこともあり、キャッチーさも加わり大きな話題を集めることで、よりアニメファン以外にも神回の評判が届いていき、作品の人気をあげるのだ。

 一方で、1つ問題提起もしたい。神回と言われる作品を観ると緻密で見応えのある作画が、高速で動く回が思い浮かぶだろう。確かにアニメは動きを最も重要視している風潮はあるが、しかしその派手な動きだけがアニメの魅力だろうか? あまり映像的には派手に動かない回でも演出次第では神回となり得るだろう。こうした静かに進行していく神回もまた、大きな話題を集めるようになってほしい。

 神回、神アニメという言葉はすっかり定着している。これらの言葉はわかりやすく使いやすいものであり、作品の評価や完成度を引き上げるのにも大きく貢献している。だがその裏には、視聴者を楽しませるための作り手の緻密な作品構成や制作努力、そして作品をより届けるための宣伝努力があることも忘れてはいけないだろう。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。平成アニメの歴史を扱った書籍『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』(KADOKAWA刊)が発売中。@monogatarukame

■放送・配信情報
『呪術廻戦』
MBS/TBS系にて、毎週金曜深夜1:25〜放送中
Amazon Prime Video、dTV、Netflix、Paravi、U-NEXTほかにて配信中
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希、木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明、照井順政、桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp/#index

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