『半径1メートルの君』は今こそ観たい作品に 豪華制作陣が伝える人の“温度感”
そんな8作の中で、特に触れておきたい作品がある。3時のヒロイン・福田が脚本を務める『とある家のこと』だ。初脚本にしては入念に練り上げられ、山崎演じる姉と松井演じる妹が生きてきた背景を、自然に、そして綿密に描き出す。これにより彼女たちが辿った人生に、目の前に流れている映像以上の存在感を感じさせてくれるのだ。そして描かれる思い出たちは色とりどり、華やかに脳裏に浮かぶ。そんな表現力に満ちた優しい言葉のセンスが光る作品であった。また、本作は山崎と松井の演じる姉妹の距離感も絶妙なのである。必要以上の仲良し姉妹というわけではないのだが、その奥底にある固い絆を感じさせる芝居が心にジンジンと響いてくる。体格にも、役の性格にも差のあるふたりが、どこから見ても本当に血の繋がった姉妹でしかないという不思議な感動をぜひスクリーンで味わってほしい。
さらに『まわりくどい二人のまわりくどい気持ちの伝え方は大胆でむしろまわりくどい』にも思わぬ仕掛けがあり、つい心が高鳴る。白石とジャルジャル・後藤の演じるふたりを、この先もずっと見届けたいと思うほど濃密な作品だ。カフェの常連客と店主という間柄でありながら、少し“特別”なふたりは夜のカフェで他愛もない会話を繰り広げる。その会話の端々から伝わる柔らかい熱と少しの緊張感は、まさに「今」触れたい温度感だろう。緊急事態宣言で飲食店での出会いも少ない中、忘れかけていた温かさを取り戻したような気がした。
「元気を届ける」のテーマの元に、明るく前向きになれるような作品が揃う『半径1メートルの君〜上を向いて歩こう〜』は、声を出して笑い、元気になれるような作品から、思わずじんわりと涙が溢れる温かい作品まで、多くの観客の気持ちに寄り添うオムニバス映画となっている。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■公開情報
『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』
2月26日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
『本日は、お日柄もよく』
出演:岡村隆史(ナインティナイン)×豆原一成(JO1)
脚本:丑尾健太郎
監督:山内大典
『同度のカノン』
出演:海宝直人×亜生(ミキ)
脚本・監督:粗品(霜降り明星)
『やさしい人』
出演:倉科カナ×徳井義実(チュートリアル)
脚本:高須光聖
監督:山内大典
『真夜中』
出演:小池徹平×じろう(シソンヌ)
脚本:又吉直樹(ピース)
監督:紙谷楓
『まわりくどい二人のまわりくどい気持ちの伝え方は大胆でむしろまわりくどい』
出演:白石聖×後藤淳平(ジャルジャル)
脚本:福徳秀介(ジャルジャル)
監督:山内大典
『戦湯~SENTO~』
出演:般若×秋山竜次(ロバート)
脚本・監督:品川ヒロシ
『とある家のこと』
出演:松井玲奈×山崎静代(南海キャンディーズ)
脚本:福田麻貴(3時のヒロイン)
監督:紙谷楓
『バックヤードにて』
出演:水川あさみ×近藤春菜(ハリセンボン)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
監督:紙谷楓
主題歌:「上を向いて歩こう」斉藤和義(SPEEDSTAR RECORDS)
企画・製作・配給:吉本興業
制作プロダクション:共同テレビジョン
(c)「半径1メートルの君~上を向いて歩こう~」製作委員会
公式サイト:https://hankei1m.official-movie.com
公式Twitter:@hankei1m_movie