東野絢香、舞台で鍛え上げた演技力 『おちょやん』第11週は千代の親友・みつえの恋物語に

 特に感動的だったのは、千代の夜逃げを手助けするシーンだ。千代の手を引き船着き場まで走り出すみつえに驚く千代に対して、「ああ、もう面倒くさい! “みつえ”でええ。ほっとかれへんやろ……友達としては」と、初めて千代を“友達”と呼び、追ってくる借金取りから彼女をかばうように両手を広げて立ちふさがったのだ。互いに一生の別れを覚悟した時にようやく本音が出せたという少しの皮肉さと、2人の間でこれまで確実に積み重ね紡がれてきた時間や信頼、絆を、彼女らの抱擁が見事物語っていた。額面通りの関係性を凌駕した感動的で人間臭いシーンだった。

 それから4年が経って女優として道頓堀に戻ってきた千代とみつえは再会を果たす。新喜劇「鶴亀家庭劇」がなかなかまとまらず一座を盛り上げようと声掛けする千代に対して、「口の達者な分、無神経なとこあるさかい」とたしなめに入れたのも、親友で千代のことをよくわかっているみつえだからこそだった。また、千代のように想いを全て素直には口に出せず、気は強いものの少し天邪鬼なみつえの視点ゆえ気づけたことでもあるだろう。

 家族の愛情を一身に受けて育ったみつえが、そんな両親に反発して駆け出そうとする恋模様にどんな展開が待ち受けているのか。自身も女将になるために、家のために駆け落ちを止められた経験を持つシズが、娘の恋路にどう向き合うのかも気になるところ。サブタイトルだけでも既に様々な人の想いが詰まっているように思えて、泣けてしまうので困ったものだ。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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