北村有起哉は観る者の身体に侵食する役者だ 映画やドラマで増す中毒性

 役者・北村有起哉をして、二世俳優というくくりで考える人は、限りなく少ない。一定の年齢以上ならば、北村を見て、北村の父であり、文学座の看板俳優であった故北村和夫を思い起こし、「なんだか、どんどんお父さんの声に似てくるなぁ」としみじみこそすれ、それ以上でもそれ以下でもない。まったく別に、それぞれを評価しているはずだ。現在、46歳。北村の中毒性が、年々増している。

『アンナチュラル』でキーパーソン、『エール』では後半戦のMVP

『書けないッ!? ~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(c)テレビ朝日

 1998年、舞台『春のめざめ』、映画『カンゾー先生』で役者デビューした北村。特定の劇団には所属しないスタイルをとりつつ、コンスタントに舞台に立ち続け、役者としての力量を備え、『CLEANSKINS/きれいな肌』『BENT』といった代表作を積み上げていく。同時に、映像の世界でもキャリアを積んでいった。ドラマでは『SP』(フジテレビ系)でのテロリスト、『警視庁 失踪人捜査課』(朝日放送テレビ)の熱血刑事、『黒服物語』(テレビ朝日系)での謎めいた会長、『トッカン 特別国税徴収官』(日本テレビ系)、『駐在刑事』シリーズ(テレビ東京系)、大河ドラマ『八重の桜』(NHK総合)、時代劇『ちかえもん』(NHK総合)、連続テレビ小説『わろてんか』(NHK総合)、大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)ほか、そして映画では主演を務めた『太陽の蓋』をはじめ、『オーバー・フェンス』などで印象を残していく。

 記憶に新しいところでは、ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の記者・宍戸。もともと一癖ある役柄を演じることに長けた北村だが、ここでの宍戸は、本当にいやらしい人物だった。ただの悪に見えれば、こちら側も拒絶してしまえばそれまで。しかしどこかに窪田正孝演じる六郎が、隙を見せてしまう空気を持っていた。そして窪田と再びガッツリ組んだ昨年の連続テレビ小説『エール』(NHK総合)。こちらでは作曲家・古関裕而をモデルとした古山裕一(窪田正孝)が、自らの戦争体験と、多くの人たちを自分の音楽によって戦争に駆り立ててしまったことへの責任を感じ、罪の意識でつぶれそうになっていたときに現れた。劇作家・作詞家の菊田一夫がモデルの池田二郎をパワフルに演じ、「後半戦のMVP」と人気を博す。菊田は裕一だけでなく、裕一の幼なじみで歌手の佐藤久志(山崎育三郎)、作詞家の村野鉄男(中村蒼)、そして視聴者の懐にもすっと入ってみせた。

 ほか昨年は、土佐弁でイキりながら、どこか残念で愛嬌のある刑事役を軽やかに演じたドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)や、短編かつわずかな出演でも、口は悪いがハートは熱い先輩役を演じてみせた『悲熊』(NHK総合)ほか、映画では、震災にも目を向けた笑いと涙あふれる家族ドラマ『浅田家!』や、石井裕也監督の意欲作『生きちゃった』、メ〜テレによるドラマ・劇場版ともに『本気のしるし』に出演。それぞれの作品を支えた。

 2021年に入ってまだ2カ月目の現在は、ドラマ『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日系)、映画『ヤクザと家族 The Family』、そして映画『すばらしき世界』も公開となった。