『おちょやん』明らかになったヨシヲの正体 姉弟が歩んだ別の道のり
千代(杉咲花)は道頓堀で偶然ヨシヲ(倉悠貴)と再会することに。千代の唇を奪った一平(成田凌)に「ようも姉やんを傷物にしてくれたな」と殴りかかり登場したヨシヲだが、千代にとっての感動の再会とは裏腹にどこか様子がおかしい。『おちょやん』(NHK総合)第58話では、脅迫を受けた鶴亀家庭劇のゆくえと、ヨシヲの裏の顔が描かれる。
一平を殴ったときにヨシヲの襟元からは不穏なものがちらつく。一平はそのことにいち早く気付いていた。思いきって千代に話そうとするも、ヨシヲが千代を追ってきてしまい詳細を話せずじまい。そして大山社長(中村鴈治郎)のところには「家庭劇の興行を続けるなら、えびす座に火をつける」との脅迫電話があり、芝居を中止せざるを得なくなっていた。
一方のヨシヲは怪しげな男たちと合流する。このやくざ者はどうやら、誰かから鶴亀を潰すことを依頼されている様子。ヨシヲもまた千代を裏切り、一緒になって鶴亀を潰そうと算段していた。
ヨシヲの異変に、またしてもいち早く気付いたのは一平だった。ヨシヲの後をつけ、男たちと会っていたことを突き止める。さらには、ヨシヲの頭からバケツの水を浴びせ、シャツに透ける刺青の存在を千代に晒す。正体のばれたヨシヲは「俺のことを警察に言ったら道頓堀の芝居小屋に仲間が火をつける」とすごんでみせるのであった。
最愛の弟との再会に喜んだのも束の間、またも家族に裏切られてしまう千代。一平は大山社長に事の顛末を話すと言うが、千代にとってはそれでも“たった一人の弟”であることから、なかなか気持ちが切り替えられない。最後は涙ながらにヨシヲを説得すると話した。
姉弟が生き別れになってから、千代とヨシヲが歩んできた道は大きく違った。環境に恵まれ岡安という家族同然の場所を得た千代に反して、誰にも助けてもらえず泥水をすするように一人で生きてきたというヨシヲ。父親のテルヲ(トータス松本)を反面教師としている点で姉弟は一緒だが、夢に向かって真っすぐに生きようとする姉に対し、貧乏暮らしに懲りた弟は人を陥れても裕福で居たいという。
そんな千代だが、ずっと夢見て大切にしてきたのは“血の繋がった”家族といつか分かり合って幸せに一緒に暮らすという夢だ。一平が鶴亀家庭劇で「母親の無性の愛」を描こうとしたように、千代や一平にとって親や家族の存在は一筋の光であり、いつか理解し手にしたい尊いものなのだろう。千代の愛が、弟との長い別離の期間を埋められることを祈りたい。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/