映画業界受難の2020年でも存在感抜群 ブラムハウス・プロダクションズの実績を振り返る

 2020年は映画業界にとって受難の年だった。新型コロナウイルスの流行により日本では映画館の営業自粛、海外では閉鎖を余儀なくされ、多くの作品が公開延期となった。VODでの配信など新たな映画配給の方法を模索する年にもなり、今後の映画業界を大きく変える転機にもなっただろう。そんななか、ひときわ存在感を放っていた映画製作会社がある。敏腕プロデューサー、ジェイソン・ブラム率いるブラムハウス・プロダクションズだ。

 同社は2020年、5作品をプロデュースし、そのうち『透明人間』、『ザ・ハント』、『ストックホルム・ケース』が日本でも公開された。1月には『ザ・スイッチ』の公開も控えている。話題作を量産しつづけるブラムハウス・プロダクションズとは、一体どんな製作会社なのか。その実績を振り返ってみよう。

『パラノーマル・アクティビティ』で注目を集めた低予算・高品質のビジネスモデル

 MIRAMAXで外国映画の買収などを担当していたジェイソン・ブラムは、2000年にブラムハウス・プロダクションズを設立した。同社を一躍有名にしたのは、2007年に製作された超常現象ホラー『パラノーマル・アクティビティ』だ。実話をもとにした本作の製作費はわずか1万5000ドル。ゲームデザイナーのオーレン・ペリが監督を務め、彼の自宅で7日間という短期間で撮影された。当然、監督も出演者も無名の人物だった。2009年9月にようやくパラマウントの配給で公開にこぎつけたが、上映館は全米でたったの12館。しかしその後口コミで徐々に公開が拡大され、1945館で上映されるようになったのだ。そして公開5週目には、週末興行収入でクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008年)のオープニング興収を上回る4万9379ドルを叩き出すことになる。最終的な興行収入は北米で1億ドルを超えた。

 『パラノーマル・アクティビティ』は、低予算を逆手に取ったモキュメンタリーの手法で臨場感とリアリティを演出し、観客を震え上がらせたのだ。同作はその高い評価と人気からシリーズ化され、合計6作が製作されている。そのうち1作目から4作目までは興収1億ドルを突破し、その後の2作も製作費を上回る興収を獲得した。

 ブラムハウスのもう1つの人気シリーズといえば『パージ』がある。こちらは「1年に1夜、殺人を含むすべての犯罪が合法になる」という設定のバイオレンスホラーで、1作目ではジェイソン・ブラムの友人であるイーサン・ホークが主演を務めた。同作も300万ドルという低予算での製作でありながら、興行収入は6400万ドルを記録。シリーズ全作が製作費を大きく上回るヒットとなった。

『ハッピー・デス・デイ』(c)Universal Pictures

 そのほかにも『インシディアス』や『ハッピー・デス・デイ』、など、多くのファンを獲得しシリーズ化された作品は多い。2018年の『ハロウィン』は、1978年に公開された同名作品の40年後を描く続編として、シリーズ最高の興行収入を記録している。ブラムハウスは低予算で質の高い作品を量産しつづけているのだ。

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