『羅小黒戦記』の“したたかな表現手法” 中国アニメが大規模公開される日も近い?

『羅小黒戦記』の“したたかな表現手法”

 今や、日本で一般公開されるアニメ映画作品の数はとても多い。一般公開される作品たちのみならず、OVAの特別上映、Netflix限定配信作品なども含めると、全て把握することすら難しいほどだ。それだけ膨大な作品数がありながらも、日本ではあまりお目にかかる機会が少ないのがアメリカ以外の国で制作された海外製のアニメーション映画だ。大きな賞を受賞しても、映画祭や小規模な公開となってしまうことも多い。

 特に近年成長著しい中国アニメーション映画に関しては、高い評判を耳にすることはあっても、日本語字幕等がある中で鑑賞できる機会はそうそうない。そんな中、日本のアニメ映画ファンにも高く評価されている作品が『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』だ。公開館数127館ながらも、国内興行ランキングTOP10圏内に1カ月以上ランクインする健闘を見せている。

 今作は2019年9月に『羅小黒戦記』として、在留中国人向けに池袋で期間限定上映されていた。日本語字幕がついていたものの、観客の多くは中国人であり、会場内は日本語がほとんど聞こえないような状況だった。それでも中国のアニメーションを一目みようと駆けつけた日本のアニメファンの口コミと、業界関係者の賞賛の声により日本人にもヒットし、徐々に上映規模を大きくした。その結果、吹替版が制作され、多くの映画館で公開されることになった。

 主人公である黒猫の妖精、シャオヘイは森の伐採により居場所を失くし、都会で暮らしていたが、人間によって迫害されてしまう。その危機から助けてくれた妖怪のフーシーと共に、森で仲間たちと暮らしていたが、人間であり道士のような存在であるムゲンに攻撃されてしまう。ムゲンに囚われたシャオヘイは街を目指す奇妙な2人旅の中で、人間の生活や文化、妖怪(自然)との対立と融和を知っていく。

 その魅力の1つはキャラクター描写だろう。シャオヘイの猫の形態ではクリクリとした大きな目や、デフォルメされた猫の動きが愛らしい。そして小学生くらいの子供の形態となると、豊かな表情と共に画面を縦横無尽に駆け回るのだ。そのシャオヘイと奇妙な相棒関係にあるムゲンの、何物にも動じないような最強の道士の姿と、時折みせるポカミスのコミカルなギャップ。フーシーの優しさと真剣な想いなどが心をうつ。シリアスとコミカルのバランスが良く、キャラクターの魅力をいきいきと伝えてくれる。

「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来」日本語吹替版 本編特別映像【アクションシーン】

 そしてなんといってもアクション描写だ。『NARUTO』などを思わせる激しい体術や仙術を用いたアクションシーンの派手でありながらも丁寧に動き回る姿は、アニメファンのみならず多くのアニメーターにも高い評価を受けた。スタジオジブリ作品などの日本アニメの影響を感じさせながらも、全てオリジナルの魅力へと昇華されており、日本国内でも根強いファンを獲得することに成功した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる