『夏、至るころ』で今年の夏を取り戻せ 池田エライザの感性に触れる、瑞々しいひと夏の物語

『夏、至るころ』で今年の夏を取り戻せ 池田エライザの感性に触れる、瑞々しいひと夏の物語

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、新型コロナウイルスが落ち着いたら福岡を旅行したい大和田が『夏、至るころ』をプッシュします。

『夏、至るころ』

 女優の池田エライザが初めてメガホンを取った本作は、福岡県田川市で育った幼なじみの男子高校生ふたりを軸に、青春時代の後悔や挫折、人生の希望や家族の愛を描くひと夏の物語。

 この映画を観て思い出したのは「高校最後の夏」と「今年の夏」でした。幼い頃から地元の夏祭りの和太鼓を一緒に叩いてきた翔(倉悠貴)と泰我(石内呂依)。高校最後の夏、泰我は受験勉強に専念するために太鼓をやめてしまいます。高3の夏といえば、部活を引退して落ち着く間もなく、「ここで受験勉強の差がつく」と言われた“あの夏”。これから先の人生をどう生きたいかという大きな課題を前に、卒業後の来年の歩みをどう選択するか。それぞれが自分だけの人生を意識し始め、同じ町、同じ学校で、同じ時間を過ごしてきた友との最初の別れ道。泰我の選択に愕然とする翔は、自分は何がしたいのか分からない。

 泰我にとっての最後の練習の帰り、翔と泰我の会話がとても印象に残りました。「なんで、大学行くん?」という翔の率直な質問に、「普通に、幸せなりたいやん」と素直に答える泰我。その返事に翔は「なぁ。幸せっち、なん?」と尋ねるのです。高校2年の夏、私の周りでは部活を辞める人が大量に発生して、ちょっと心の中でざわついたのを思い出しました。

 夜のプールではしゃぎ、夏祭りに力強く響き渡る和太鼓。同じように意味もなくどこかではしゃぎ、それだけに没頭して熱中できた夏は、今年はどこにもなかった。そして、彼らと同じように、高3以外にも様々な分岐点で悩んだり、考えた人が多かった夏だった気がします。翔と泰我を見ていると、悩んで葛藤して勢いで走って、全てをひっくるめて夏だなと思うし、何かを考えたり、友人と電話したり、自粛期間が明けてちょっとだけ外に出て遊んだりした時間を思い出して、蝉が同じように鳴いた夏が今年もあったなと改めて感じました。一度公開が延期になって、公開に至った12月に観れたからこそ、自分のこれまでの夏に過ごした日々やこれからの夏への希望で、今年の夏を埋められる作品でもありました。

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