『夏、至るころ』で今年の夏を取り戻せ 池田エライザの感性に触れる、瑞々しいひと夏の物語

『夏、至るころ』で今年の夏を取り戻せ

 大人になる準備期間の葛藤という、重くなりがちなテーマを描いていても、本作には全く暗いイメージを持ちません。初めから終わりまで、スクリーンにはみずみずしさが染み渡ります。主演の倉悠貴をはじめ、全国2,000人の中からオーディションで選ばれた石内呂依、ヒロイン役のさいとうなりら新人俳優の何色にも染まっていない、そのまんまの素朴さが映し出されていた。そして、オールロケで撮影された田川市の緑の景色と、蝉たちが彩る夏の音が、本物の夏の空間を映画館に再現します。

 監督を務めた池田エライザ自身の「ふるさと」への思いや、自らの経験を織り交ぜた完全オリジナル作品を観終わって、今まで女優や歌う姿しか見てこなかった池田さんの感性の部分に初めて触れられたのかなと感じました。私が池田さんを知ったのは、2015年、大学生の頃にある雑誌の街頭調査の集計をしていたとき。原宿の高校生たちにとったアンケートの「憧れの人」の項目には「池田エライザ」の文字が並んでいました(それだけがきっかけということは全くないだろうけど、その後、その某雑誌に登場)。モデル、SNSで「自撮りの神」「エライザポーズ」で注目を浴び、『映画 みんな!エスパーだよ!』のヒロイン役、数々の学園モノ映画に出演、テレビでも『ホクサイと飯さえあれば』(MBS/TBS)、『伊藤くん A to E』(MBS/TBS)、『ぼくは麻理のなか』(FOD)、『青と僕』(FDO)、そして映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』での存在感には圧倒され、見るたびに魅力が増していく存在。監督した『夏、至るころ』を通して、また新鮮な池田エライザの魅力に触れられる、そんな一本でもあります。

■公開情報
『夏、至るころ』
全国公開中
出演:倉悠貴、石内呂依、さいとうなり、安部賢一、杉野希妃、大塚まさじ、高良健吾、リリー・フランキー、原日出子
原案・監督:池田エライザ
プロデューサー:三谷一夫
脚本:下田悠子
音楽:西山宏幸
撮影:今井孝博
企画:田川市シティプロモーション映画製作実行委員会、映画24区
企画協力:ABCライツビジネス
協力:田川市 たがわフィルムコミッション
製作:映画24区
配給:キネマ旬報DD、映画24区
(c)2020「夏、至るころ」製作委員会
公式サイト natsu-itarukoro.jp

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