『悪魔のいけにえ』とヌーヴェル・ヴァーグの共通項は? ザ・シネマメンバーズ配信作から考える

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『ピクニック』(1936年/監督:ジャン・ルノワール)

「ジャン・ルノワールこそ『永久に新しい波である』とジョナス・メカスは彼の『映画日記』に書いているけれども、映画を作ることの苦悩と歓びをとおしてのみ『映画は万人のもの』となりうることを<ヌーヴェル・ヴァーグ>に教えたのが、ジャン・ルノワールだった」――山田宏一『友よ映画よ 〈わがヌーヴェル・ヴァーグ誌〉』(話の特集)より

 ヌーヴェル・ヴァーグの若い監督たちが最大の師と仰いだフランスの先行者が、ジャン・ルノワールである。印象派の画家オーギュスト・ルノワールを父親に持つ彼は、オールロケ撮影や即興演出を独自に駆使し、ドキュメンタルな感触を「生きる歓び」として劇映画の中に柔らかく取り入れる達人だった。トリュフォーはヒッチコックと並んでルノワールを自身の神とし、ジャック・リヴェットは『フレンチ・カンカン』(1954年)の助監督を務めた。

 そのルノワールの真髄がわずか40分に凝縮された純度100%の傑作が『ピクニック』である。モーパッサンの短編『野あそび』を原作に、全編野外での撮影。自然光に包まれた幸福なピクニックのスケッチはまさしく父オーギュストのタッチを受け継いだもので、モノクロームながら「フィルムによる印象主義」を具現化した。

『ピクニック』

 すべて太陽の下で撮る予定だったが、雨が降ったら雨のシーンを入れる。パリ近郊のセーヌ河岸、夏の日曜日。家族と共にパリからやってきたアンリエットはまもなく結婚を控えている。だが彼女は現地の青年アンリに恋をする――。 

 アンリエットを演じるシルヴィア・バタイユは、当時、作家・哲学者ジョルジュ・バタイユの夫人であり、のちに哲学者ジャック・ラカンと再婚。彼女がブランコに乗る場面の素晴らしさは映画史上に燦然と(だが慎ましく)輝く宝石の瞬間だ。青年アンリとの切ないラブシーンは、批評家アンドレ・バザンいわく「映画史上、最も残虐で、最も美しい瞬間である」。 

 撮影は1936年の7月から8月。だが戦争が勃発し、ドイツ軍によって完成版が破棄。1946年になってようやく公開となった。助監督にはルキノ・ヴィスコンティ、ジャック・ベッケル、写真家のアンリ=カルティエ・ブレッソンなど錚々たる若き日の大物が揃い、台詞協力の詩人ジャック・プレヴェール、そして「ヒロイン女優の夫」であったジョルジュ・バタイユも撮影に参加。ちなみにプーラン親父役がルノワールその人である。

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