『チェリまほ』はなぜ“安心感”と“ドキドキ”が同居する? 回を追うごとに切ない安達と黒沢の心模様

 毎週木曜深夜を待ち遠しくさせている『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京ほか)も、いよいよ後半戦に突入した。

 以前、私は「町田啓太、“おかしみ”を作り出す独特の個性 『チェリまほ』黒沢役でも魅力が爆発」という記事を書いたが、回を追うごとに、コミカルな部分よりも、安達(赤楚衛二)と黒沢(町田啓太)、ふたりの気持ちを丁寧に描いた切ない部分が多くなっているのを感じる。

 そんなことを思いながら、第1話から改めて見返してみた。確かに黒沢は、謎にニコニコしていてさわやか。それでいて、心の中では、安達とエレベーターで密着したときに「やっば、すっげー近い。朝からこんなにツイてていいのかな。めっちゃドキドキすんだけど」と考えていたりする。また、残業している安達のうなじのホクロを見つめ、「めっちゃエロい」と感じていたりもする。こうした、表向きの姿と心の中のギャップにコミカルさを感じていたのだと思う。

 しかし、回を追うごとに、コミカルな部分ではないところが魅力的な見せ場になっていくのだ。

 それは、安達の黒沢への気持ちの変化と並行で描かれる。安達は30歳になって人の心が読めるようになったことで、黒沢の外には漏れていないはずの気持ちを読むことができるようになり、黒沢が自分に好意があることを知っている。だからこそ、黒沢が自分に対して、欲望を向けてくるのではないかと、びくびくしているところもあった。

 例えば、安達が終電を逃し、黒沢の部屋に泊まることになったときは怖くなってきて、「黒沢、俺に何を求めてるんだ?」「まさか襲われる?」とまで考えてしまう。しかしそれを「それは黒沢に失礼」と考えるシーンが安達の妄想の後には必ずある。

 実際に黒沢は、寝ている安達(実際には寝たふりをしているのだが)の近くまで行っても、安達の寝床の奥にある自分の携帯を取るだけで、安達に指一本触れることなく去っていく。安達は再び、「襲われると思ってまじごめん黒沢」と心の中で詫びる。

 職場の飲み会での王様ゲームでふたりがキスさせられそうになったときにも、安達が怖がっているのをみて、黒沢はおでこにキスすることでその場をやり過ごす。安達はそのとき黒沢が「ごめん」と言っていたのを知るのだ。

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