『エール』佐久本宝「俺のそばさいてほしい」 浩二とまき子のラブストーリーが完結

 『エール』(NHK総合)にまた、新たな夫婦が誕生した。

 裕一(窪田正孝)の故郷・福島を舞台に、2つの人間ドラマが描かれた第22週「ふるさとに響く歌」。前半は作詞家として大成した鉄男(中村蒼)と幼い頃に生き別れになった弟・典男(泉澤祐希)が築いた家族との物語、後半は裕一の弟・浩二(佐久本宝)のラブストーリーだ。

 戦時中、「3年以内にいい人を見つける」と音(二階堂ふみ)に約束していた浩二。しかし、戦後から復興期を迎えても浩二はいい人を見つけるどころか、母のまさ(菊池桃子)が持ってくるお見合い話にも乗り気でない様子。東京からやってきた音は、そんな浩二が畠山リンゴ園の娘・まき子(志田未来)に想いを寄せていることに気づく。一方のまき子は戦死した恋人を忘れられず、2人の恋は進展することもない。

 まきこの父(マキタスポーツ)はそんな娘を見かねて新天地の東京に行かせようとするが、複雑な心境を抱えるまき子。少なからずまき子も浩二に気がある様子なのに、すでに諦めムードの浩二は彼女に「俺応援すっからさ」と言ってしまう。そのことでまき子の態度が冷たくなり、落ち込む浩二に味方する裕一。そもそも裕一は誰か見ても明らかな浩二の恋心にも気がつかず、「さてはこやつ鈍感だな?」とみんなが思っていたが、ここまで兄弟揃って鈍感だとは……。代わりに音が、浩二に東京行きを止めてほしいと思っているであろうまき子の本音を代弁する。

「やらずに後悔するより、やって後悔した方がいい!」

 それは、かつて音が幼い頃に安隆(光石研)から教えられたこと。音がその言葉に何度も背中を押されたように、浩二の心もようやく動いた。まき子の元に走り、「俺のそばさいてほしい」と伝えた浩二。まき子は待ちわびていたように涙を流し、2人は共に生きていくことを誓う。身体を寄せ合った浩二とまき子を囲むリンゴの木々は、まるで2人を祝福しているかのようだ。

 浩二が婿養子として畠山家に入ることで固まった2人の結婚式では、裕一が自分や亡くなった父・三郎(唐沢寿明)の代わりに古山家を支えてきた浩二に感謝の意を告げる。

「家族の絆はひとりでに出来るものじゃない。浩二がふんばってくれたから、僕は家族でいられたんです」

 裕一と浩二は分かり合えないことも多かったが、今では鈍感なところもそっくりな仲良し兄弟だ。鉄男と典男も、音や2人の姉と妹もそう。『エール』は音楽がテーマのドラマであり、家族愛・“兄弟愛、姉妹愛”が印象的な作品でもある。

関連記事