エンタメと政治の距離が急速に近づく? 社会派ドラマとドキュメンタリー映画の盛り上がり

 さらに、芸能人や作家、映画関係者などが政治に関する発言をする機会も急増している。「政治の話はタブー」とされる日本では、これまでにないほどの盛り上がりだ。

 一つには「モリカケサクラ」のいずれに対しても、国民が納得できる答えが一切示されない状況や、コロナ禍の対応、失業者・自殺者の増加などという不安や不満が噴出してきたことが挙げられるだろう。

 逆に、検察庁法改正を世論の反発が見送りにさせた「手応え」もあるだろう。さらに、芸能人や作家、映画関係者など、エンタメに関わる人々が背負う責任感・覚悟もおそらくある。象徴的なのは、作家・村山由佳氏の学術会議問題に関するこんなコメントだ。

「それまでは別に私なんかがコミットしなくても、誰か然るべき人がきちんと声を上げて、間違いは正されていくはずだと考えていたのですが……」(引用:#排除する政治~学術会議問題を考える:「発禁処分までほんのひとまたぎ」 作家・村山由佳さんが語る言論の今と伊藤野枝 - 毎日新聞

 また、社会的弱者やマイノリティの声・気持ちをすくいあげることの多い脚本家・野木亜紀子氏は東洋経済オンラインのインタビューでこう語っている。

「ニュースやドキュメンタリーは観ないけどドラマや映画は観るという人はたくさんいます。エンターテインメントの形にすることで世の中に伝える、知ってもらうのは意義のあることであり、必要なことです」(引用:逃げ恥脚本家語る「エンタメ共感競争」への異論 | 映画界のキーパーソンに直撃 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 エンタメ作品が伝えるメッセージは、単に「政治家」「権力者」たちだけに向けたものではない。数々の「不正」や「問題」を他人事とし、見逃し、諦め続けてきた私たち一人ひとりこそが、現在の「笑えない」状況を作り出した当事者であるという事実を、エンタメ作品を通して考えるべきときが来ているのではないだろうか。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

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