アメリカ大統領選はどうなる? ハリウッドはこの選挙にどう向き合っているか

 アメリカのスターやセレブリティは政治的主張をはっきりする風潮にあるが、今年の選挙戦が今までと違うとしたら、デジタル・ネイティブのミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)、ジェネレーションZ(1996年~2012年生まれ)に向けた情報発信が盛んだということ。彼らはそれ以前の世代よりも人種的に多様性があり、半数近くが人種や民族的マイノリティであると認識しているとの調査がある。ショートビデオSNSを駆使し、BLM(ブラック・ライブス・マター)運動に積極的に参加していたのも主にこの世代だ。有権者人口のうち、ミレニアル世代とZ世代の一部による期日前投票率は過去最高に達し、アリゾナ州やテキサス州など激戦州(Battleground State)と呼ばれる州のミレニアル世代とZ世代の人種比率の半数は非白人だとされている。レディー・ガガは、これらの激戦州の有権者に投票へ行くことを促す。投票日前夜には、彼女が以前住んでいたペンシルバニア州のピッツバーグ(最も激戦が予想される州)で、バイデン/ハリスとともにレディー・ガガとジョン・レジェンドがステージに立った。

Joe Biden & Lady Gaga + Kamala Harris & John Legend | Election Night 2020 Rally in Pennsylvania

 カマラ副大統領候補は、バイデン支持を表明しているテイラー・スウィフトの楽曲「Only the Young」をフィーチャーしたCMを発表。

 また、ハリス候補は公式YouTubeアカウントで、ビリー・アイリッシュやセレーナ・ゴメスと対談を行っている。

Kamala Harris and @Billie Eilish Zoom

 ビリー・アイリッシュはこの対談内で、自分の世代の若者が政治に対しニヒリズムを感じている状況について「小さな自分たちの意見なんて誰も気にしていないって思っちゃうのも理解するけど、よく考えて。誰の意見だって重要で、あなたの意見は大事なんだよ」と語りかける。この数ヶ月、アメリカのエンターテインメント業界やクリエイティブに携わる人たちは、ビリーのこの一言を根付かせるためにあらゆる種類の作品を提供してきた。若者だけでなく、4年前は政治に懐疑的になり投票を諦めてしまった人たちに、民主主義の意味を再び認識し、選挙権を行使してもらうために。投票でしか世の中は変わりえないし、たくさんの1票が集まれば大きな力となり国を動かすことが可能になる。選挙権がない者から見ても、アメリカのエンターテインメント業界のこの健全さはとても羨ましく思う。

参考

https://www.npr.org/2020/10/30/929177685/with-lil-wayne-ice-cube-and-50-cent-trump-makes-final-push-for-black-voters

■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。

■配信情報
『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』
Amazon Prime Videoにて配信中
監督:ジェイソン・ウォリナー
出演:サシャ・バロン・コーエン、マリア・バカローヴァ
Courtesy of Amazon Studios

『シカゴ7裁判』
Netflixにて配信中
監督・脚本:アーロン・ソーキン
出演:サシャ・バロン・コーエン、エディ・レッドメイン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マイケル・キートン、マーク・ライランス、アレックス・シャープ、ジェレミー・ストロング、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ジョン・キャロル・リンチ、フランク・ランジェラ
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