『麒麟がくる』光秀を“真っ直ぐ”描くことで際立つ戦国の無情さ 新章突入でいよいよ“本番”へ

『麒麟がくる』新章突入でいよいよ“本番”へ

 コロナ禍でテレビドラマのスケジュールが振り回されるなか、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』は予定通り44回までを、年をまたいで2021年の2月7日まで放送することが発表され、ファンは安堵しているところ。

 本能寺の変で織田信長(染谷将太)を討ったとされる明智光秀(長谷川博己)を主人公に、室町時代の終焉から織田信長、豊臣秀吉(佐々木蔵之介)、徳川家康(風間俊介)と3大戦国大名が覇権をめぐって絡み合っていく安土桃山時代の黎明を描く、壮大かつ浪漫あふれる視点の大河ドラマは、ラストは本能寺の変から光秀の死であろうと史実から想像できる。それが揺るぎない史実であるから。

 先日、同じNHK総合で放送していたミニドラマ『光秀のスマホ』(1話5分、全6回)もスマホをもっているという現代性を加味しながらもなお、ラストは変わらなかった。今年の初頭に流行った漫画『100日後に死ぬワニ』のように、“カウントダウン”にむかって大衆は盛り上がる。『麒麟がくる』――信長や光秀の物語もそのタイプである。

 だが、『麒麟がくる』はそういった典型的カウントダウン形式かと思わせて、なにかちょっと違う印象のするトリッキーなドラマであった。主人公・光秀は、生まれから青年期までが不鮮明で、歴史に明確に登場してくるのは、本能寺の変が起こる15年ほど前。『麒麟がくる』では全編の半分くらいをその不明な部分を創作で描くというトライをしていた。

 将軍・足利義輝(向井理)が暗殺され、足利義昭(滝藤賢一)が将軍になり、光秀は信長と共に将軍の覚えよろしく重用されるようになるのが第28回。ここから衣裳も濃紺の渋いものに変わり、重みが増した。いよいよこれからが本番という感じなのである。長かった!

 これから光秀の娘・たまに芦田愛菜、三条西実澄に石橋蓮司、武田信玄に石橋凌、秀吉の母・なかに銀粉蝶、光秀の家臣・斎藤利三に須賀貴匡、正親町帝(坂東玉三郎)の子・誠仁親王に加藤清史郎、織田信忠に井上瑞稀(HiHI Jets)、細川忠興に望月歩と錚々たる俳優の登場が発表され、彼らが躍動することを想像すると期待が膨らむ。

 これまで丹念に描かれてきた光秀は“麒麟降臨”を軸に生きている人物。「麒麟」とは“王が仁のある政治を行う時に必ず現れると言われる聖なる獣”で、光秀の目標は麒麟のくる世の中をつくること。すなわち、戦のない世の中である。

 戦いが続く不安定な時代、光秀は次々と仕える人物を変えていく。だが決して芯はブレない。大きな国をつくることで世を平定しようとしていた斎藤道三(本木雅弘)、文字どおり麒麟がくる平和な世を求めた義輝、僧侶として貧しい者に施しをしてきた義昭と「麒麟」を呼べる精神をもった者たちにつき従っていく。

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