『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は“2回目”が楽しい 振り返ると気づく魅力的なシーンの数々

シリーズで最もホグワーツのデス・トラップ具合が光る作品?

 ちょっとセンチメンタルな感じで伏線について振り返ってきたが、『秘密の部屋』はそんな生温い作品では決してない。むしろ、シリーズで一番「一歩間違えたら死んでいた」が多い、危険な映画なのだ。ファンタジー描写に目を向けてワクワクする一方で、『ハリポタ』は子どもがこれでもかってぐらい何度も死にかける。ヤバい。何よりホグワーツが学び舎というより、存在自体デス・トラップであることは『賢者の石』で薄々感づいてしまう事実である。ここで、今一度ハリーと仲間たちが回避した「死」を振り返ろう。

・暴れ柳に叩き殺されかける
・泣き声で死ぬと言われているマンドレイクの苗を軽装備で交換
・相変わらず殺意の高いクィディッチの試合(ブラッジャーはいい加減使用禁止にすべき)
・決闘クラブという名の合法死闘場
・使用者に催眠をかけ、命を吸い取るダイアリー
・禁じられた森で大量の蜘蛛に血肉を求められる
・純血以外の生徒を根絶やしにするコンセプトで作られた秘密の部屋の存在自体
・秘密の部屋に向かう途中の落石
・バジリスク

 ブラッジャーは骨折したし、バジリスクに関してはフォークスの涙がなければ、ハリーは死んでいた。ちゃんとある程度のダメージを受けていながらも彼らが本作で生き延びたのは、それこそマジックだろう。こんな末恐ろしい学校の仕組みを放置するどころか、生徒の危機にしっかりと対応しきれない学校側の杜撰さも、本作では明らかになっている。

 まずは生徒が死にかけているにも関わらず、“樹齢を重ね貴重だから”という理由で暴れ柳を傷つけたことを叱るスネイプ先生。スプラウト先生はマンドレイクの苗交換の際、気絶したネビルを医務室に連れていくこともなく呆れて放置する。クィディッチではハリーを殺そうとするブラッジャーの暴走を先生らはただ傍観し、現場にかけつけた低学年のハーマイオニーが代わりに処理した。そして秘密の部屋が開かれ、犠牲者が複数出ているにも関わらず(そして過去に死人が出ていることも知っているのに)学校を即時閉鎖せず、「注意喚起」に止まったダンブルドアの判断もいかなるものだろうか。PTA待ったなしの大問題だ。

 そして何よりも根本的に、最も重要な科目と言っても過言ではない「闇の魔術に対する防衛術」の担任にギルデロイ・ロックハートを採用したことだ。面接時に実技は確かめなかったの!? その後も、明らかに教師陣は彼がビッグマウスなだけで実際何もできない、役立たずだと知っているかのようだった。ジニーが秘密の部屋に攫われた際、スネイプはロックハートに「昨夜、秘密の部屋の入り口を知っていると言っていましたよね。あなたの出番です」と言う。こんなの、明らかにほらふきだとわかっているはずなのに、先日の決闘クラブの仕返しでもするかのように彼は意地悪をしたのだ。たちが悪いことに、これにマクゴナガルが便乗して「決まりですね、あなたのその伝説的な力で何とかしてもらいましょう」とほくそ笑みながら、彼を討伐隊に任命するのだ。しかも、彼一人だけ! 酷い! 教師同士のいじめ現場を目撃してしまったような後味の悪さを、その後のロックハートのクズな態度で相殺した演出がとられている。「ああ、こんな奴ならどうなっても良いか」という観客のヘイトゲージを貯めるだけのキャラに徹されたロックハートは、クズではあるものの少し可哀想かも。

 とにかく、ホグワーツは基本的に子供に優しくない。

おどろおどろしいクリーチャーに胸躍る!

 シビアな学校生活はさておき、本作は何より魔法動物がたくさん登場するのが魅力的だ。それも、なんとなく魔法世界っぽく、少しおどろおどろしい姿をしているのがグッとくる。しかし、アラクノフォビアの方はご注意。禁じられた森のシークエンスで、常時絶叫することになるだろう。ここで登場したアラゴグはアクロマンチュラという生物で、人並の知能を持つ巨大蜘蛛だ。一度に最高100個の卵を生むとのことで、一体あの森にどれだけの蜘蛛が存在するのか、考えただけでもゾッとしてしまう。

 ろくでなしロックハートの授業で登場したピクシーも印象的な存在だった。モデルとなったピクシーは悪戯好きの妖精パックが名前の由来となっており、イングランドの伝承に登場する。それによると普段は透明で、ポルターガイストを起こし、赤ん坊を攫うという。映画で登場したピクシーは群青色で目に見えるが、そのサイズ感は伝承に基づいた20センチほどのものだ。ちなみに彼らは『死の秘宝 PART2』でも再登場している。

 先述したマンドレイク、フェニックスと、一作目より多くの動物が登場するが、やはり目玉はなんと言ってもバジリスク。これが興味深いことに、なんと鶏の卵をヒキガエルの腹の下で孵化させると誕生するらしいのだ。そして映画の中ではハーマイオニーの調べた文献にしっかり記述されていたのに、「蜘蛛が逃げるのは前触れ」に気を取られてすっかりスルーされていた弱点がある。雄鶏による鶏鳴だ。鶏の卵から生まれることと何か関係があるのかもしれない。その鋭い歯には、分霊箱を破壊することさえできる猛毒が含まれている。

 そしてバジリスクを貫いたグリフィンドールの剣は、その「刀身よりも強い物質を吸収する」という特性により、毒を吸い込んだ。それが後に最重要アイテムとなるのだから、バジリスク様々である!

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