『TENET』エリザベス・デビッキらオーストラリア出身俳優台頭のワケ ハリウッドとの関係も深い!?

 なぜここまでオーストラリア出身俳優はハリウッドで強いのか。その理由を挙げれば様々なことが考えられる。アメリカ・イギリスに次ぐ英語圏の大国であることを第一に、ギブソン、ラッシュ、ブランシェット、ワーシントンらを輩出したオーストラリア国立演劇学院などの育成環境の充実。そしてなんといっても、長年にわたって培われてきたハリウッドとの関係の深さも忘れてはなるまい。ハリウッドメジャーの映画会社の多くがオーストラリアにスタジオを建設したことによって、米豪合作の作品も数多く作られてきた歴史があり、地元の人材が雇用されるチャンスがスタッフのみならずキャストにも与えられることとなったことも極めて重要なファクターといえるだろう。

 前述した『華麗なるギャツビー』はオーストラリア国立演劇学院出身のラーマン監督による米豪合作映画であり、デビッキもそうしたチャンスを見事にもぎ取った一人である。とりわけ2010年代以降にハリウッドで頭角を現した“第三世代”においては、女優の活躍が目立つ。それはやはりブランシェットやキッドマンがハリウッドで積み上げてきた功績によるものが大きいのかもしれない。エミリー・ブラウニングにミア・ワシコウスカ、『ピッチ・パーフェクト』のレベル・ウィルソン、そして『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でオスカー候補にあがり、DC作品でのハーレイ・クイン役で人気が急騰したマーゴット・ロビーと、それぞれ持ちうるカラーが明確に異なっているのも興味深いポイントだ。

 ちょうどこのコロナ禍において、ハリウッドはもちろん世界中の映画業界が足踏みをしているなかで、比較的早い段階で事態の収束がみられたオーストラリアとその隣国ニュージーランドでは、大作映画の製作がすでに段階的ではあるが再開されている。ニュージーランドでは『アバター』の続編の撮影が進められており、オーストラリアではMCUの最新作『Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings(原題)』の撮影が再開。年明けには『Thor: Love and Thunder(原題)』も再開する見通しだ。オーストラリアの映画界がこれまで以上に活気付くとなれば、さらなるスター俳優が続々誕生し、ハリウッドだけでなく世界中を賑わすことになるに違いない。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『TENET テネット』
全国公開中
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス
製作総指揮:トーマス・ハイスリップ
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ディンプル・カパディア、アーロン・テイラー=ジョンソン、クレマンス・ポエジー、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
公式サイト:http://tenet-movie.jp
公式Twitter:https://twitter.com/TENETJP

関連記事