アカデミー賞有力候補『ノマドランド』 MCU『エターナルズ』抜擢の監督らが明かす製作の裏側

アカデミー賞有力候補『ノマドランド』とは

 では今作は、どの程度事前に脚本に書かれたもので、どの程度、 書かれていない(即興的な)ものだったのか。「クロエ監督は、 プロの俳優とノンプロの俳優たちの演技のパフォーマンスをスムーズにさせるだけでなく、 彼らの日常生活もスムーズにいくようなセット作りをしていた。 ノンプロの俳優たちは、僕らとともに何かを共有したり、食事をしたり、滞在したりしたこともあった。 実際にフランシスとクロエ監督は、フルサイズバン(キャンピングカー) に泊まっていたこともあり、共に仕事したノンプロの俳優たちとキャンプもしていた」 と製作者ピーターが振り返り、さらにピーターは、 現場ではプロの俳優とノンプロの俳優たちが、お互い学び合うことがあったそうで、最も自然に、 最も心地よい環境を作り出し、素晴らしい演技を引き出したジャオ監督を褒めた。

 そんな独特なノンプロの俳優との仕事は、 必然性から生まれたものだとクロエ監督は明かす。「(クロエ監督が以前に手がけた)映画『Song By Brother Taught Me(原題)』で、パインリッジ・インディアン居留地に行った際に、 あの映画と契約した子供(ノンプロ俳優)は、(クルーの) 誰も演じることができるなんて想像もできなかった。そんな子役がどこにいるかもわからないし、 そんな幅広くキャスティングできるよう資金もなかった。それに、 自分が暮らしていたコミュニティでもなかった。だから、そのようなノンプロ俳優とのコラボは、 映画のキャラクターに真実味をもたらせるうえで、重要な役目を果たすことになった」 と答え、今作でのノンプロ俳優との仕事が3度目になるため、クロエ監督は「 観客の注目や映画構成を維持しながら、(これまでの作品よりも)より改善できたと思う」 と自信をのぞかせた。

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 演技に慣れていないノンプロの俳優に流れるような自然な演技をさ せるために、 彼らはどのような心地よい会話の空間を作り上げたのか。「 最初は、ただ彼ら(ノンプロの俳優)の話を聞いていれば良いんです。ただそこに座って、 誰かの話を聞いていれば、あなた方は(彼らの話に)驚かされるから。だから、あなたがこう あるべきだと思うことは、彼らにあまり多く伝えず、さらにあなたの世界観や彼らが世界ではどう見られているかなど、 あなたの意見をあまり多く伝えないでください。むしろ彼らに話させて、あなたは聞くだけで良いんです。 そのやり方をしばらくすると、彼らは心地よくなって自分たちの話をしてくれます」 とクロエ監督は、会話を引き出しながら勧めていたことを明かした。さらに彼女は「 クルーやキャストとともにエコーシステム(他者と共存共栄の関係を築くこと) を作らなければいけないの。そういうことをセットから離れた時でも供給することで、 我々が彼ら(ノンプロ俳優)の世界の一部であるように感じられ、その逆(彼らを我々の世界の一部に感じさせること)ではないことが理解できるの」 と彼女なりの見解を示し、映画内では見事に俳優とノンプロの俳優の共存関係が成り立ってい る。

 一方マクドーマンドは、ノンプロの俳優とどう関わっていたのか。「彼女は、ノンプロの俳優の言葉に本当に反応しているだけで、それ自体はマクドーマンドにとって、それほど難しいことじゃない。ただ、ノンプロの俳優だと、シーンの感情の起伏から(演技から)外れることも多々あって、マクドーマンドはそんな時どうすれば良いのか、一瞬で感じ取って衝動的に演じていたわ。マクドーマンドはノンプロの俳優の前に居ながら、ファーンというキャラクターでも居てくれたため、私の監督としての仕事20%を、マクドーマンドが約5ヶ月もこなしてくれたわ」とジャオ監督は感謝した。

 本作の題材となっているノマド(特定のオフィスなどを持たない働き方をする人)たちは具体的にどんな人たちなのだろうか。「(ノマドと呼ばれる人たちには)異なったグループがあって、『バンド・オブ・ブラザーズ』や、サブカルチャー的な要素も含めた『トラベラー』と呼んでいるグループがある。彼らは私たちとは異なった生き方をしていて、彼らノマド同志の道が(ときどき)交差することもある。今作のほとんどの研究は、ジェシカの原作から来ていて、ジェシカは彼らを擁護する言葉を原作で示していた。確かに、この映画は喪失や損失、特にファーンのそれを描いている。ただ調査した中で、彼らが必然的にそのような暮らしをしているようには感じなかった。実際にジャオ監督が脚本を書きながら、調査していたときに、ジャオ監督が会った『ノマド』の人々たちとの写真付きのメッセージを僕に送ってきて、それはとても希望に満ちていて、沢山の希望があるように見えました」とスピアーズは答え、さらにノマドの人々は、通常は人生において晩年を迎えた人たちがほとんどであることも教えてくれた。



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