『エール』の“音楽”はいかにして作られたのか? 瀬川英史に聞く劇伴制作の裏側

『エール』音楽担当・瀬川裕史に聞く

「楽曲がキラキラして見えることが最大のミッション」

ーー作曲家として古関裕而さん/主人公・裕一に共感する部分は?

瀬川:東北の出身だったり、音大へ行かず独学だったり、実家の事は弟に任せっぱなしだったり、自分用の五線紙の印刷を頼んでいる会社がたまたま同じだったり、自分の進みたい道を選んだ結果波紋が生じたり……と共感する部分は結構ありますね。福田雄一監督も締め切りギリギリで小学5年生的な無茶なリクエストしてくることはありましたけど、今の時代はコンピューターがあるので作曲作業が終わってからのデータの準備や譜面の用意は当時と比べ物にならないくらい効率が良いんです。それと比べたら古関さんが演出家の菊田一夫氏から受けたプレッシャーやストレスはとんでもなかっただろうなと思います。スコアを手書きして、ミュージシャンに配る譜面も全て手書きだったのですから……。そういう部分は時代を感じました。

ーー古関さんの楽曲でもっとも好きな一曲を教えてください。また、その楽曲が劇中で登場する際に意識された点はありますでしょうか?

瀬川:一番好きなのは「長崎の鐘」ですね。古関さんの曲はできるだけオリジナルの通りにアレンジとレコーディングをしました。でも、この曲だけはオリジナルとは別のアプローチでアレンジしたバージョンがあります。僕が古関裕而さんへのリスペクトをアレンジとして形に残せた曲です。

ーーここまでの『エール』を観ていると、「音楽の力で物語を動かす」といった力業を抑え、あくまで物語に寄り添う形になっていると感じます。今後、現在まで歌い継がれる裕一(古関さん)の代表曲が続々登場するかと思いますが、いわゆる“見せ場”となるような回などはあるのでしょうか?

瀬川:寄り添う形に見えているならば、劇伴作曲家的には良い仕事をしてるということかなと思います。台本が良くて上手い役者が揃っていれば音楽は添え物で十分です。『エール』では古関さんの楽曲がキラキラして見える、ということが僕の最大のミッションなのです。今後古関メロディが矢継ぎ早に登場します。どの曲も成り立ちが楽しめる作りになっていると思います。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる