70年~80年代名作のリメイクや続編が増えた理由とは? 『コブラ会』『透明人間』などから探る
まずは1970年代の名作であり、新たに前日譚TVシリーズとして生まれ変わる作品が2作ある。その一つは、1975年に製作されたアメリカン・シネマを代表する映画『カッコーの巣の上で』。ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー主演のこの名作は、刑務所の強制労働から逃れるため精神異常を装ってオレゴン州立精神病院に入ったマクマーフィが、絶対権力を誇る婦長ラチェッドと対立しながら、入院患者たちの中に生きる気力を与えていくというもの。70年代当時、映画は高く評価され、アカデミー賞作品賞も収めた。そしてこの度、サラ・ポールソン演じる若き日の看護師ラチェッドを主人公にした前日譚TVシリーズ『ラチェッド』が、9月18日よりNetflixで独占配信されることが決定している。
もう一つが、1974年に製作された映画『チャイナタウン』。ロマン・ポランスキー監督、ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ共演の本作は、1930年代後半のロサンゼルスを舞台に、ある浮気調査の依頼を受けた私立探偵が、調査をしていく過程で巨大な黒幕のうごめく殺人事件に巻き込まれていくというもの。こちらは、昨年11月、その『チャイナタウン』の前日譚を描くTVシリーズを、デヴィッド・フィンチャー製作総指揮で、Netflixのもと製作されることが発表された。
まず名作を、前日譚TVシリーズとして手がける魅力としては、オリジナルの名作に登場したキャラクターの若き日を新鮮に描いていることだ。若き日をどのように描くかを視聴者に想像させることで、すでにオリジナル映画のファンである人々に、新作への期待を膨らませることができる。そして、次にオリジナル映画作品のファンにとっては、いかにその前日譚の設定が、最終的にオリジナルの名作映画に繋がっていくのか、ストーリー上でも想像させて、展開を追っていく点も魅力なのだ。
ではカルト的人気の映画『ヘル・レイザー』はどうだろうか? 1987年公開のクライヴ・パーカー監督によって制作された『ヘル・レイザー』は、究極の快楽は究極の苦痛より生まれるという妖しくもおぞましい世界観を描いたもの。今年の4月に『ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ』のマイケル・ドハティ監督が、HBOのもとドラマ版『ヘル・レイザー』を企画した。マイケルは脚本家兼製作総指揮を務め、映画『ハロウィン』のデヴィッド・ゴードン・グリーンがパイロット版でメガホンを取る。実際、カルト的な作品『ヘル・レイザー』をTVシリーズ化する利点は、2時間ものの長編映画だと表現できなかったシーンも、TVドラマとして時間をかけて描くことで、新たなキャラクターを登場させたり、新設定で描ける。そのうえ、近年のCG映像の技術発展によって、オリジナル映画の世界観を、忠実にCGでTVシリーズでも再現できやすくなったことも大きな要因だ。
これは、今年4月に発表されたJ・J・エイブラムス製作総指揮で、HBO Maxのもとスティーヴン・キングの小説『シャイニング』に登場する恐怖のホテル「オーバールック・ホテル」を舞台にしたTVドラマシリーズも、そうであると言える。要するに、あのスタンリー・キューブリックの名作の世界観を、しっかり追求できるような技術があることは重要なのだ。
名作と繋がる新作TVシリーズを作る利点は、それだけではない。現在は新型コロナウイルスで映画館に足を運ぶことに懸念している人々にとっては、自宅のTVで鑑賞できるため、健康面でも心配がないのだ。そんなじっくり時間をかけて鑑賞できるのが、80年代の『ベスト・キッド』シリーズの続編TVシリーズ『コブラ会』だ。オリジナル映画は、1984年にジョン・G・アヴィルドセン監督、ラルフ・マッチオ主演。そのストーリーは、転校生のティーンエイジャーが、いじめっ子たちから自身の身を守るために、剛柔流の空手をミスター・ミヤギから学ぶというもの。
続編TVシリーズ『コブラ会』は、オリジナル版から34年後。かつては不良グループのリーダーで空手少年だったウィリアム・ザブカを主人公に、彼が所属した空手道場「コブラ会」を再開させていく。同続編TVシリーズはすでに第2シーズンまでYouTube Premiumで配信されたが、日本では観られなかった。だが今年の8月28日から日本でもNetflixで第1、2シーズンまで、一挙に鑑賞できるようになった。