『けもなれ』から『わたナギ』まで 平成/令和のドラマで描かれる“多様性”のテーマ

 あらゆるルールや常識がひしめく中で生きていく私たちだが、そこに必要以上にがんじがらめになって苦しんでいる人もいるのが現実。特に何かしらの集団の中で生活をしていると、世間や周りからの目、そこからできあがっていく同調圧力により、いつのまにか自分はこうあるべきという思い込みや自分はこうだからとネガティブな自己イメージを作ってしまうレッテル貼りに悩まされる人も多いはずだ。

 ただし、昨今では「多様性を受け入れ合い、異なる価値観同士でも共存していくことが大事」という傾向も出てきている。「他者と共存しながら自分らしく生きること」「ありのままのその人をポジティブに受け入れ合いながら共存すること」「思い込みからの解放」がテーマになっている作品も増え、そのような作品がしっかりと視聴者の心を掴み、根づき始めている時代になってきたと言えるのではないだろうか。最近のドラマを振り返りながら探っていきたい。

ありのままを受け入れ合いながら、自分らしさを育てていく

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 視聴者から人気を博したドラマ『凪のお暇』(TBS系)、『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系/以下、『僕キセ』)、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系/以下、『逃げ恥』)の共通項としてあるのは、主人公が何かしらの理由で自信を持つことができずに、自己肯定感が低くなってしまっている、もしくは過去にそうであったことだ。

 『凪のお暇』ではありのままを受け入れられたことがないOL・凪(黒木華)、『僕キセ』では周りに合わせられずに人と違うことから他者と打ち解けられずに悩んだことがある大学教員・相河先生(高橋一生)、『逃げ恥』では恋愛経験が乏しく女性との恋愛の関わり方に悩む平匡(星野源)と過去の失敗を引きずり奥手になりがちなみくり(新垣結衣)が主人公として描かれた。

 これらの主人公の特性は、現実にも転化することができるリアリティがあり、まずはそこに共感させられ、感情移入していく人が多いのではないだろうか。なかなか打ち明けられないことだからこそ、尚更自分と重ね合わせていったはずだ。

 でもその人物像を見せられるだけでは、そこに希望を見出すことができない。そこでこれらの作品は、新たな出会いと他者との関わり方に変化を生むことで、徐々にその自己肯定感の低い自分から解放されていく様子が描かれていく。そこに広がるのは、人と人とが優しさをベースに築かれていく関係の作られ方である。その人のありのままを受け入れ合いながら、自分らしさを育てていく。それが多くの人の希望となっていき、大きな反響を得たのであろう。

 そしてこれらの作品がヒットするのは、このような世界観を求めている方が多いということの裏付けでもあるのではないだろうか。

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