『彼女、お借りします』から見える、アニメと原作の相乗効果 『マガジン』発ラブコメの強さとは?

 冴えない20歳の大学生・木ノ下和也が、初めてできた彼女にふられたショックを癒すべく、ネットで見かけたレンタル彼女を利用するところから始まるラブコメ漫画『彼女、お借りします』。宮島礼吏が2017年より 『週刊少年マガジン』(講談社刊)で連載を開始したこの漫画がアニメ化され、現在テレビで放送中だ。原作コミックスは2020年8月現在、第16巻まで発売中だが、アニメ化効果で第1巻の売り上げが10倍に伸びたという。

 有料の恋人代行サービス、レンタル彼女(以下レンカノ)として和也の前に現われた黒髪の美少女・水原千鶴は、なんと和也と同じ大学に通っており、しかも和也が住むアパートの隣室の住人、一ノ瀬ちづると同一人物ということが後日発覚する。和也はレンカノの水原千鶴に恋人のふりをしてもらいつつ、プライベートな隣人としての一ノ瀬ちづるの飾らない素顔も知って彼女に惹かれてゆく。しかしそこへ、和也と別れたはずの元カノ・七海麻美や、千鶴と同じレンカノのバイトをしている更科るか、桜沢墨たちも和也の周囲に集まり、すっかり日常は騒がしいものへと変わってしまう。

 『彼女、お借りします』の監督を務める古賀一臣は、かつて恋愛アニメ『Just Because!』(2017年)の演出で、10代の少年少女の心の機敏を繊細に描いたことがある。本作では千鶴と和也の微妙な距離感を笑いの中に落とし込みつつ、双方の祖母に嘘がばれないように取り繕うコメディと、レンカノと利用客という嘘の恋が本当の恋へ変化する恋愛ドラマの両立が見事だ。優柔不断でズボラな和也に苛立ちながらも、そんな和也にアタックをかけてくる他の美少女たちに気を揉んでしまう千鶴の心境を上手く描き出している。また、原作の絵柄を活かしながら、可愛らしいアニメキャラクターをデザインした平山寛菜の功績も見逃せない。

 原作漫画の連載開始から約1年後の2018年9月には、コミックスの累計発行部数が75万部を突破したことが原作者のTwitterで報じられたが、さらにテレビアニメ化が発表された2019年12月には累計300万部と順調に発行部数を伸ばしてきた。アニメ放送開始直前の2020年5月は400万部だったが、同年8月には「アニメ放送後の大反響で」(※原作者のTwitterより)500万部に到達したというから、今回のアニメ化がいかに大きな反響を呼んだかが伺える。

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