鈴鹿央士、『MIU404』で証明した“新人”らしからぬ演技力 菅田将暉との共演で起きた変化

 最終回までの残り2話となった『MIU404』(TBS系)。主演の綾野剛、星野源はもちろん、第4機動捜査隊の面々、毎話登場するゲスト、サプライズ登場となった菅田将暉など、まさに適材適所と言える配役でその魅力が引き出されている。そんな魅力的な登場人物たちの中で、もっとも“変化”したと言えるのが、鈴鹿央士演じる成川岳だろう。

 第3話で登場した成川は、第7話で再登場し、第9話では“主役”ともいえる立場を担った。毎週『MIU404』のレビューを執筆しているライターの佐藤結衣氏は、成川を演じた鈴鹿について次のように語る。

「新人賞を総ナメにした映画『蜜蜂と遠雷』で鮮烈な演技を見せてくれた鈴鹿さんですが、『MIU404』で初めて知ったという視聴者も多いと思います。『あの役をやっていた人だ』という事前情報がないからこそ、どこにでもいる“普通の高校生”だった成川が、久住(菅田将暉)によって闇に堕ちていく姿がより生々しく映ったのかなと。第3話で登場した際は、バシリカ高校の元陸上部の3年生として、目立つ存在というよりは、元陸上部の勝俣(前田旺志郎)や真(山田杏奈)と共に純朴な雰囲気がとても印象的でした。だからこそ、第3話前半では少年少女たちの青春ドラマの要素も含んだ1話完結ものになるかなと思っていたのですが……。前田さんや山田さんと一緒にいるときは本当に高校生にしか見えなかったのに、菅田さんとのツーショットになると一気に雰囲気も禍々しくなって。髪型や服装が変化していることも大きいと思いますが、この短期間で佇まいをここまで変化させることができるのは、鈴鹿さんの演技力があってこそだと思います」

 広瀬すずが映画撮影の際に現場にいた鈴鹿をスカウトしたのは有名な話だが、鈴鹿自身の境遇と成川というキャラクターもある意味において共通していたのではないかと佐藤氏は続ける。

「それまでと違う世界に入っていったという点において、広瀬さんに導かれて芸能界という世界に本格的に足を踏み入れた鈴鹿さん自身と、久住に導かれて闇の世界に堕ちていった成川には共通点があるように感じます。もちろん、鈴鹿さん自身にはいい大人たちが付いて幸せな結果になっていると思いますが、成川はそうならなかった世界線の姿とも言えます。まだ居場所がはっきりと定まっていない、芸能界という世界でどう生きていくかという鈴鹿さん自身のゆらぎと成川の思いは共通する部分があったのではないでしょうか。『中学聖日記』(TBS系)のときも演技初挑戦という岡田健史さん自身の姿が、ひたむきに頑張り続ける黒岩晶とも重なっていたように、新井順子プロデューサーのキャスティングは本当に巧みだと思います。その2人が本作で追われる側と追う側になっているのも味わい深いですね」

 また、『MIU404』を観て、鈴鹿の演技ポテンシャルは“新人”ではないと佐藤氏は続ける。

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