『半沢直樹』は『デビルマン』のよう 半沢に襲いかかるシーズン2の“悪役”たちを振り返る
7年のブランクがなかったように大人気の日曜劇場『半沢直樹』(TBS系)。誠実なバンカー・半沢直樹(堺雅人)が怒りをむき出しにして悪党と闘っていく姿を見ると、アニメ『デビルマン』を思い出してしまう。
『デビルマン』のエンディングはデビルマンが高いところから街を見つめていて、そこに「今日もどこかでデビルマン」がかかる。「人の世に愛がある。人の世に夢がある。その美しきものを守りたいだけ♪」。この歌詞が、『半沢直樹』シーズン1の第5話、半沢が妻の花(上戸彩)とキラキラとした街の光を見つめながら「あの小さな光のひとつひとつのなかに人がいる。おれはそういう人たちの力になれる銀行員になりたい」と語る場面とかぶって見えて胸が熱くなるのだ。
デビルマンに次々襲いかかってくるすごいデザインの悪魔たちは、半沢に嫌がらせしてくる登場人物たちのようだ。がしかし、『デビルマン』に限らず、ウルトラマンや仮面ライダー、戦隊ものの敵役、悪役はやっていることはあれでも、人気であることが少なくない。彼らが魅力的であればあるほど、闘うヒーローが輝き、彼らを退治したときの爽快感は増すというもの。『半沢直樹』は悪役のおかげでドラマが盛り上がっているといって間違いはない。
そんな『半沢直樹』の愛すべき悪役たちを改めて振り返ってみると、まず挙がってくるのは当然ながら、大和田暁(香川照之)。彼を『ワンピース』や『ドラゴンボール』の敵にたとえようと思ったが、あまりに面白くて愛らしく、香川照之が『香川照之の昆虫すごいぜ!』(NHK Eテレ)もやっているせいで、もはやかわいいキャラに見えてしまい、『アンパンマン』のバイキンマンしか浮かばなかった。でも尾田栄一郎先生に絵を描いてほしい。
大和田の設定は、出世がすべて、そのためには手段を厭わない。強者にへつらい弱者には強く出る。会社の経営に行き詰まった半沢の父親(笑福亭鶴瓶)を見殺しにした悪の根源で、シーズン1での半沢の原動力は彼への復讐である。
なんといっても『半沢直樹』の“顔芸”の第一人者である。大和田がいなかったら、半沢はあそこまで凄い顔をしなかったのではないか。今回のシーズン2では、半沢の決めセリフ「倍返し」に対抗すべく「恩返し」発言を出し、第1部の終わりの第4話では「恩返しだよ」と歌舞伎調な口調で見事に物語を纏めて見せた。そのほか「おしまいdeath」という名セリフも吐き(これは香川自身が考えたものだとか)、力の入った顔芸だけでなく、セリフの力でも魅せた。東大卒インテリ俳優の面目躍如である。
シーズン2の第1部では香川照之の従兄弟・市川猿之助が、尊敬していた大和田が半沢によって悪事を暴かれて地位を転落、その復讐に立ち上がる伊佐山泰二を、「おめえ」「てめえ」とべらんめえ口調のやたらと柄の悪い人物として演じぬいた。
猿之助は歌舞伎俳優。女形も得意で、おばちゃんキャラも巧いのだけれど、『半沢直樹』にはオネエキャラ・黒崎駿一(片岡愛之助)がいるから今回は直球・わんぱく下町っ子みたいなキャラでいこうと選択したのであろうか。