King & Prince 永瀬廉が『弱虫ペダル』で見せた成長 ストーリーを熱くさせる役作りに注目

 King & Prince・永瀬廉主演の映画『弱虫ペダル』が好評だ。アニメ化、舞台化、小説化など様々なメディアミックス展開がされている人気漫画が原作とあり、公開前こそ賛否両論の声が挙がっていたが、公開から3日間の累計興行収入が約2.5億円を記録。SNS上でも「面白い」「想像以上に良かった」という声が目立っており、原作ファンからの好意的な反応が広がっている。原作は68巻に及んでおり、映画で描かれたのは原作の序盤の部分。112分の映画のためかなりコンパクトになってはいるものの、エンターテインメント作品として秀逸な作品になっていたのではないだろうか。

 実際に鑑賞して感じたのが、「つい熱くなってしまう映画」であるということ。永瀬は「(自転車シーンは)代役を使っていない。CGも使っていない」と、8月14日放送の『とくダネ!』(フジテレビ系)で話していたが、生身の人間、しかも演者ががむしゃらにペダルを回しまくる必死さがあるからこそ、観ているこちら側にもその熱量が伝わってくるのである。

 この体当たりの自転車シーンも然ることながら、さらに作品の熱さを助長しているのが作品前半に詰め込まれた永瀬演じる小野田坂道のキャラの作り込みだろう。同作の永瀬はKing & Princeとして活動しているときのようなキラキラしたアイドル感はゼロ。一番最初のシーンから、劇中アニメ『ラブ☆ヒメ』のテーマソング「恋のヒメヒメぺったんこ」を口ずさんでおり(アニメ版とはメロディが少し違っている)、カバンにはキーホルダーやバッジが大量についている。さらに、いつも笑っているような困っているようななんとも言えない表情を浮かべており、絵に書いたようなオタクキャラが描写されている。チームメイトである今泉俊輔(伊藤健太郎)のクールでスタイリッシュなキャラとの対比も効いていて、坂道のオタクキャラが際立っている。前半をたっぷり使ってこのキャラクターを刷り込んでいる故に、中盤以降に坂道ががむしゃらに頑張ることでギャップが生まれ、感情が揺さぶられるのではないだろうか。

 総北高校自転車部に入部してすぐの1年生ウェルカムレースでは、他の部員から大きく出遅れるものの、天性の才能を発揮してすぐに追いつく。さらに先を走る今泉と鳴子章吉(坂東龍汰)に追いつくために、主将の金城真護(竜星涼)は「あと30回転あげろ」と無茶振り。しかし坂道は全力でやってのけ、今泉をも抜いて山岳リザルトを勝ち取った。また、インターハイ出場を懸けた県大会でも落車に巻き込まれて最下位になってしまったものの、100人抜きを達成してチームに追いついていた。冷静に見れば全てが“漫画的”なのだが、気が小さく、運動が苦手なオタクキャラ全開の坂道が達成するからこそ、熱い展開に結びつくのだろう。

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