『今日から俺は!!』『コンフィデンスマンJP』がヒット ドラマ映画化の強さはまだ健在?

 新型コロナウイルスの影響で映画館の興行が苦戦している中、『今日から俺は!!劇場版』と『コンフィデンスマンJP プリンセス編』が大ヒットしている。この2作は、テレビドラマを映画化した幅広い世代が楽しめるコメディ映画という共通点があるのだが、何より役者の魅力を極限まで引き出していることが最大の魅力だ。

『今日から俺は!!劇場版』(c)西森博之/小学館 (c)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会

 まず『今日から俺は!!』だが、本作は三橋貴志(賀来賢人)と伊藤真司(伊藤健太郎)という不良少年二人を主人公にしたヤンキー漫画をドラマ化、映画化したものだ。原作は1988~97年に『週刊少年サンデー増刊号』(小学館)と『週刊少年サンデー』(小学館)で連載されていた西森博之の同名漫画だが、映像化に際して監督・脚本を担当した福田雄一は、舞台を連載時期よりも前の1981~82年に設定した。そのため、80年代色が強く、当時を体験した大人にとっては懐かしく、当時を知らない若者にとっては、時代劇のような感覚で作品世界を楽しめたのが広い世代に支持された理由ではないかと思う。

『今日から俺は!!劇場版』(c)西森博之/小学館 (c)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会

 劇中では福田が得意とする脱力ギャグと激しいケンカが交互に描かれるのだが、面白いのは喧嘩がとてもリアルだということ。ドラマの時から生々しいとは思っていたが、映画では、より振り切ったものとなっている。

 今回は伊藤と三橋がかつて戦った不良と共闘し、北根壊高校の不良と戦うのだが、北根壊を束ねる柳鋭次を演じる柳楽優弥の悪役ぶりがマジで怖い。

『今日から俺は!!劇場版』(c)西森博之/小学館 (c)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会

 柳はナイフを常に携帯しており、躊躇することなく相手を刺せる男で、観ていて「痛そう」な場面が何度も登場する。この「痛そう」というのはとても大事なことで、喧嘩は「血の流れる暴力」で「死ぬこともある」ということをちゃんと描いていることの証明だからだ。この感触は、ゲームやダンスに接近している『クローズZERO』や『HiGH&LOW』といった不良映画より以前の80年代の不良映画の雰囲気に近いもので、個人的には、井筒和幸監督の『ガキ帝国』を思い出す。これは登場する不良たちの顔立ちや佇まいによるところも大きい。特に前述した柳楽優弥と、巨漢の不良・大嶽重弘を演じる栄信が素晴らしく、福田監督は、コメディだけでなくアクションにおいても役者の魅力を最大限まで引き出していると感じた。

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