キャスティングはひらめき重視? 新井順子プロデューサーが明かす、『MIU404』の全容

野生の勘でオファーした菅田将暉のサプライズ出演


――菅田将暉さんのサプライズ登場も、大きな話題になりました。撮影延期の影響は受けなかったんでしょうか?

新井:いやー、そこはお願いしました。もう頼むことしかできませんでしたね(笑)。最悪あきらめないといけないなと覚悟はしていたんですけど、ご本人もすごく楽しみにしていてくださって。できるだけ、こちらもコンパクトにスケジュールをまとめて取れるようにして叶った感じです。

――サプライズというのは、新井さん発案だったと監督の塚原さんにお聞きしました(参照:塚原あゆ子が明かす、毎回違う味で作る『MIU404』 テレビドラマの最前線で考えること)。

新井:そうですね、単純にサプライズって面白くないですか? 先に発表していたら「いつ出てくるんだろう」「どうやって出てくるんだろう」という目で観てしまうと思っていて。見えないものがあってもいいんじゃないかな、みたいな。

――あの役は、サプライズで話題になる人を登場させようというのは、もともと決めていたんですか?

新井:いえ。誰がいいかと話していたときに、「そう言えば一昨日、菅田将暉さんのマネージャーさんと喋ったな」と思い出して、以前、菅田さんと仕事したこともあったので、「ダメもとで相談してみます」と。みんなから「えー!?」って言われながら「いや、ここは当たってくだけてみましょうよ」と。そしたら「面白そうですね」と快諾していただけて。菅田さんの悪役ってあんまりみないなと思っていたので、こういういつもと違う感じの役を本人も面白がってくれそうだなとは思っていて。“得体の知れない菅田将暉”が観たいなと。テロップが先に出てしまうとつまらないと思ったので、それもなしで、完全にサプライズで登場していただきました。

ゲストのキャスティングもひらめき重視

――毎回ゲストの方の演技にも引き込まれるドラマになっていますね。

新井:芝居が良いからですね。 演出は、ゲストが光るようにではなく、物語が生きる形にしてると思うので、役にその人がハマってくれたんだと思います。それにしても美村さんが出演された4話の放送日、リアルタイム検索のランキングで1位が「青池さん」だったのは驚きました。役名のほうが話題になっているのが衝撃で。さらに驚いたのが、その次に「野木さん」(笑)。思わずスマホ画面をスクショしました。

――青池透子役に美村さんをキャスティングした理由は?

新井:ひらめきです(笑)。青池さんって、弱い立場の人なんだけど、すごく強く生きようとする。ついてない人生だけど、最期まで何かに賭けているというか。そういう儚げな雰囲気を持ちながら、芯を持った感じの役柄が、美村さんなら上手に表現してくれそうだなとオファーしました。でも、想像以上に素晴らしかったですね、印象的だったのは、私たちが言ったことを熱心にメモされていて、ずっと真摯に向き合ってくださって、笑った顔に癒されてしまいました。主演オーラみたいなものもあるのに、身近に感じさせる何かがある。「すごいなー」ってスタッフみんなで絶賛していました。美村さんだったから、ここまで「青池さん」が話題になったんだと思います。

――弱い立場にスポットライトを当てるといえば、第5話もそうでしたね。

新井:「楽しかった」だけでは済まないところもあるから、「見てよかった」と思ってもらえるようなバランスを取らないととは思います。5話だと、悲しいけれどそういうことがこの世にはあるんだということが、1つ知れて明日からちょっと優しくできる……みたいな。だから、マイちゃん役の子は天真爛漫な感じが絶対に必要だと思って、陽な印象の子に演じてもらおうとオーディションをしましたね。「かわいそう」と同情を呼ぶのではなく、「頑張ってるな」と応援したくなるような。結果、フォンチーさんと巡り会えて、本当によかったです。ぜひ、彼女のインスタグラムを見てほしいです。マイちゃんの気持ちを理解して演じてくれたのが伝わってきますから。

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