水原希子が語る、コロナ禍で考えた“発信すること”の重要性 「言わないことで後悔はしたくない」

水原希子、コロナ禍で考えた“発信”の重要性

「せっかくの土壌を最大限に生かしたいという気持ちで日々発信している」

ーー自粛期間中、仕事以外はどういう過ごし方をされていたんですか?

水原:本当にずっと家にいましたね。ひたすら家で家族と一緒に過ごしていました。でも、やっていたのは、仕事につながることが多かったかもしれません。7月から撮影が始まる映画がかなり挑戦的な役なので、そのためにいろんな映画を観てインスピレーションを得たり、あとリモートでボイストレーニングをやってます。役作りのためにというのもあるんですけど、単純にストレス解消にもなるし、声の幅を広げた方がいろいろ役立つかなと思っていて。映画を観るときも、発生の仕方や声の重要さに気づいて、ちょっと視点が変わった部分もありました。あと、この期間中に一番やってみたかったのが、手織り機を使った織物でした。

ーーそれはどういう理由で?

水原:自分で「OK」というブランドをやっているんですけど、今回のコロナで考えたのが環境問題のことだったんです。もともと関心はあったんですけど、コロナによってより深く考えるようになりました。人が外に出ないことによって環境汚染が改善したという話もあって、空や海が綺麗になったというニュースを目にしたときに、かなり衝撃を受けたんです。もしコロナが落ち着いたとしても、これが元に戻ってしまうのはどうなのかと考えたりもして……。それで、自分たちが住む場所は自分たちで守っていかなきゃいけないと実感したんです。ファッション業界が環境に及ぼす影響も大きいので、自分がブランドの活動もやっていく以上、なるべく害がないかたちにしたいと思いました。そこで考えたのが手織り機でした。

ーーいまファッション業界において環境問題は大きなトピックですよね。

水原:世界では服のゴミの量があまりにも多すぎと分かったので、少しでも減らしたいなと。いままで知らなかったんですけど、着なくなったTシャツとかを使って、クッションとかランチョンマットとかバッグとかを作ることができるんです。実際にやってみたら、すごくいいなと思ったし、着なくなったTシャツがまったく違うものに生まれ変わったときの感動がすごくて。服を作るときも、ポリエステルやプラスチックはなるべく使わず、オーガニックコットンなどを使っていかなければいけないなとか、いろいろ考えました。あと、やっぱり今回のコロナもそうですが、自然災害が起きたときに一番しわ寄せを受けるのって、貧困層の方々だと思うんです。自分は本当にラッキーで、大変な時期に家族と一緒に幸せな過ごすことができましたけど、そうじゃない人がたくさんいる。言葉にするとき綺麗事みたいになってしまいますが、本当に人と人が助け合って生きていかなきゃいけないなと思いました。なので、私のブランドの服を買ったら売り上げのうちの何パーセントかを自動的にいろんな団体に寄付できるような、自然な形で購入したお客様がそういったサポートできるようなシステムを導入しようと思っていて、いまいろいろ動いているところでもあります。

ーーたしかに今回のコロナウイルスは感染症そのものだけでなく、それに付随するたくさんの問題をいろいろと考えさせられるところがありました。

水原:地球に住んでいる全員がひとつのことを考えるって、いままで本当になかったんじゃないかなと思っていて。ある意味、すごいことじゃないですか。特にいまはインターネットやSNSなどで世界中どこでもつながっていて、グローバル化が進んでいる中でこういうことが起こったのは、それ以上のメッセージを持っているような気がするんです。それこそ「Black Lives Matter」の問題もそう。みんなで協力しながら、人類として、世界をいい方向に進めていくためのきっかけになればいいなと思います。

ーーBlack Lives Matterの件もそうですが、コロナウイルスに関しても、水原さんはかなり早い段階からInstagramやTwitterでメッセージを発信していましたよね。

水原:これはまず伝えておきたいんですが、私は別にアクティビストではないんです。でも、いま起きていることに対して、みんなが平等に発信する権利があると思うんです。もちろん影響力が大きいのも自覚していて、情報が正しいのかどうかとか、自分自身も注意しなければいけないところはあると思います。ただ、InstagramやTwitterなどでせっかくたくさんの方々にフォローしていただいている土壌がある中で何も言わないのは、すごくもったいないと思う。なので、せっかくの土壌を最大限に生かしたいという気持ちで日々発信しています。逆に、言わないことで後悔はしたくないんですよね。

ーーいろんなことを発信されている中で、やはりカルチャーへの言及も大きかったですよね。特に「Save Our Space」や「SAVE the CINEMA」など、クラブカルチャーやミニシアターへの支援。5月24日には、水原さん率いるOFFICE KIKOとして、オンライン音楽イベント『OK presents ONE WORLD HOME PARTY』も開催されました。

水原:「Save Our Space」に関しては、絶対に何か発信しないといけないなという使命感がありました。私は音楽がすごく好きだし、クラブも大好き。妹(水原佑果)もDJですし、クラブカルチャーがなかったらいまの私は絶対に存在していないっていうぐらい、大事な存在です。これからどうなるかはまだまだわかりませんが、私が声を上げることによって支援の輪が広がるのであれば、絶対に意味があると思いました。元の姿に戻るのにはまだ時間がかかるかもしれませんが、形を変えてでも残していくべきカルチャーなのは間違いありません。家にいてもやっぱり踊りたくなりますし、踊ることは人間の本能的な部分でもあると思うので、そういう場所は絶対に守っていかないとなと。「SAVE the CINEMA」に関してもそう。映画業界は私にとって、すごくリスペクトしている場だし、自分も役者としてまだまだ高みを目指していきたいなと思っているので、特別な映画館という場所がなくなってしまうとしたら、ものすごくつらい。それこそ配信で観ることもできる時代ですけど、映像芸術を観る場所としての映画館は、今後も間違いなく必要だと思っています。

ーー今回のコロナでいろいろ考えることもあったと思います。水原さん自身の思いや考え、活動に関しては、何かしら影響がありそうですか?

水原:基本的には今までとあまり変わらないと思います。でも、自分が本当にやりたいこと、自分が大切だと思うこと、人が希望を感じること……そういう“意味のあること”をやっていきたいと思うようになりました。だから正直言うと、さっきの環境問題のこともあるので、いわゆる華やかな意味でのファッションへの関心は、他と比べて少し薄れている部分もあります。今回のことをきっかけに、今後自分がどういうことをやるのか、その責任感はより感じるようになりました。自分の活動を通して、誰かが少しでもポジティヴになれたり、人として前進できるようなことができたらいいなと思います。

【特集ページ】「コロナ以降」のカルチャー 現在地から見据える映画の未来

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