『PART3』は“繰り返しネタ”に注目! 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』再地上波放送の意義

『BTTF』が再び地上波放送された意義

 主人公マーティ・マクフライと通称ドクことエメット・ブラウン博士の2人が、タイムマシンのデロリアンに乗ってタイムトラベルを繰り返す『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)は、過去の歴史に介入して現在の情勢を変化させる“タイムパラドックス”というSFテーマを盛り込みながら、現代人が過去の時代に行くことで生まれるカルチャー・ギャップのおかしさや、軽快なコメディの味付けも手伝って全世界で大ヒットとなった。もともとは続編の構想などなく、1作限りで完結した映画となるはずだったが、興行面での成功と続編を望むファンの声から製作に至ったのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年)と、『PART3』(1990年)だ。

 シリーズ3作品とも物語の骨子は、マーティとドクが間違ってしまった歴史を正しい時間軸へ戻すために、デロリアンで過去未来を行き来するという内容だが、タイムトラベルの目的はそれぞれ違っている。第1作はマーティが自分の若き両親の縁を取り持つために1955年へ、第2作はいじめっこのビフが権力を持ち、それによって荒廃した未来世界を修正するために2015年へ、そして3作目はひとりだけ西部開拓時代に飛ばされてしまったドクを連れ戻すために、マーティが単独で1885年へと飛ぶ。マーティとドクが作中で暮らしている現実時間は、第1作が公開された年と同じ1985年の設定だが、タイムトラベル先の服装や文化、食品を通じてマーティがカルチャーショックを体験するお約束も続編に綿々と引き継がれており、まさに時をかけるタイムトラベルものならではの面白さが本シリーズの強みになっている。

 ろ過されて綺麗な水が飲めるのが当たり前な現代人のマーティが、茶色く濁った水をコップにそそがれ、信じられないという形相でそれを凝視する第3作の食卓場面には、思わず笑ってしまうだろう。

 さて、シリーズ完結編となる『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』だが、撮影自体は第2作と一緒に進められて、編集で2本に振り分けられた。つまり第2作が完成する頃には、すでに第3作の映像素材も揃っていたわけである。マーティが呆然とひとり立ち尽くす第2作のラストシーン直後に、ガラリと雰囲気が変わった西部劇タッチの予告編が付いており、公開当時にこれを観た観客たちの期待感をいやがおうにも高めるファンサービスだった。監督のロバート・ゼメキスと脚本のボブ・ゲイルは共に西部劇が大好きだったので、3作目は最高だったと後に語っている。

 西部開拓時代のドクは鍛冶屋として働いており、馬車の暴走事故から救った女性クララと恋に落ちるのだが、このドクとクララのロマンスを中心に、1985年へ帰還するために蒸気機関車のパワーを利用するマーティとドクのアクションが描かれる。ドクが開発した燃料により猛スピードで走る機関車と、それに押される形で線路上を爆走するデロリアン。クライマックスの盛り上がりは前2作品に引けをとらない見せ場の連続だ。この暴走機関車は精巧なミニチュアを使って撮影されたシーンがあるので、どこがその場面なのか注意しながら観るのも良いだろう。

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