ソニー製作マーベル映画プロジェクト「SPUMC」の現在 女性ヒーロー誕生の“3つの噂”とは

ソニー製作マーベル映画プロジェクトの現在

 米ソニー・ピクチャーズが、マーベル・コミックの女性キャラクターを主人公にした新作映画を準備しているというニュースが先日流れました。実現するかどうかは別として、このニュースは、この先のアメコミ映画がどうなっていくかを示唆しており大変興味深いです(※以下『アベンジャーズ/エンドゲーム』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のネタバレを含みます)。

 まず前提として、ソニーピクチャーズは「SPUMC」という構想をもっているようです。「SPUMC」とは、SONY PICTURES UNIVERSE OF MARVEL CHARACTERSの略。“マーベル・キャラで構成されたソニー版シネマティック・ユニバース”みたいな意味です。これは、アベンジャーズ系のMCUのマーベル・シネマティック・ユニバースとどこが違うのか? 実はMCUが始まる前、マーベルはスパイダーマンおよびスパイダーマン・コミックに登場する主要キャラの映画権をソニー・ピクチャーズに渡しています。だから同じマーベル原作のヒーローでも、『アベンジャーズ』などの映画はディズニーからMCUとしてリリースされ、スパイダーマンものはソニー映画となります。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(c)2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: (c) & TM 2019 MARVEL

 ただし、トム・ホランドのスパイダーマンだけはファンの期待に応えるべく、ソニー籍でありながらMCUにも登場します。映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と『スパイダーマン:ホームカミング』は物語的につながっていますが、ビジネス的には前者はディズニー映画(MCU)、後者はソニー・ピクチャーズ作品です。一方、スパイダーマンのコミックにはスパイダーマン以外にも魅力的なキャラがいっぱいいます。その筆頭がスパイダーマンのライバル、ヴェノムですね。そこでソニーはトム・ハーディ主演でMCUとは関係ない『ヴェノム』の映画を作りあげたわけです。「SPUMC」とは、この『ヴェノム』路線をさらに広げたもので、この先ジャレット・レトが主演を務める、スパイダーマンのヴィランである、吸血鬼怪人を主人公に迎えた『モービウス』(2021年3月19日全米公開)、トム・ハーディ主演『ヴェノム』の続編『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ(原題)』(2021年6月25日全米公開)となります。ちょっと長くなりましたが、このへんの事情をまず頭に入れておいてください。

『ヴェノム』(c)&TM 2018 MARVEL

 「SPUMC」が興味深いのは、一つのキャラを深堀りすることでシネマティック・ユニバースが作れるということです。MCUにしろ、DCにしろ今までのユニバースはアイアンマンとキャプテン・アメリカ、スーパーマンとバットマンというようにそれぞれ別のヒーローをつなげていくことで大きな世界観を作ってきましたが、「SPUMC」はスパイダーマンという世界の中だけで一つの世界を作る。つまり縦に掘っていく形でしょうか? 

 アメコミヒーローものの場合、1つのヒーロー物語でも魅力的なヴィラン、サイドキック(相棒的ヒーロー)がいるので十分映画ネタはあります。この原稿を書いている時、DCの、次の『フラッシュ』の映画で、1989年の『バットマン』を演じたマイケル・キートンがバットマン役に復活するかもとの噂がながれました。ファンが期待しているのは、これを機にマイケル・キートンのバットマンを、MCUのニック・フューリー的なフィクサーに据えて、バットマンしばりのシネマティック・ユニバースを作り『バットガール』、バットマンの初代相棒・ロビンが独立したヒーローになる『ナイトウィング』、新たな時間軸の「バットマン・ビヨンド」として近未来を舞台にバットマンを引き継いだ若者の活躍を描く『バットマン・ザ・フューチャー』が実現することです。「SPUMC」が成功すれば、こうした試みが加速するかもしれません。そして伝えられる「SPUMC」情報において興味深いのは、ヴェノム、モービウスの次はここにきて女性ヒーローがメインになりそうだということです。

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