『Re:ゼロ』はなぜヒット作になり得たのか? 異世界ものとしての特異性を紐解く

 もうひとつ、本作の特異な点として、魔女の存在する世界という設定がある。テレビアニメ1期で触れられた、エミリアに似た容姿という嫉妬の魔女サテラを含め、原作では複数の魔女の存在が明かされている。そして魔女を崇拝する狂信者集団の魔女教と、そこに存在する大罪司教たち。これらは『Re:ゼロ』のシリアスなドラマの牽引役として大きな部分を占めており、本作がダークファンタジーでもあることを示している。なによりも、死ぬと時間を巻き戻してセーブポイントで目が覚めるという、ゲーム世代の若者にヒットする基本設定は、他の異世界ものにない本作独特のアイデアだ。こういったさまざまな基本設定がうまく機能して、『Re:ゼロ』をヒット作に押し上げたのは確かだろう。

 『Re:ゼロ』は死に戻りというタイムリープ設定や、魔女教徒、コメディにもシリアスにも振れる魅力的な登場人物など、ファンを惹きつける原作由来の要素が多くあるが、声と動きが付くアニメになったことにより、原作を知らなかった多くの人に作品が波及したのも見過ごせない。特に水瀬いのりが声を演じるレムのひたむきな純粋さは、アニメファンの注目の的となり人気を博した。スバルが度重なる失敗と自己嫌悪の念から、レムを連れて現状から逃げ出そうと考える第18話「ゼロから」の放送前には、アニメ公式側が都内主要都市の駅に大型広告を掲示して、これも話題となった。「最低で、最高で、絶望で、希望で、そして……心灼く25分45秒」というコピーが書かれた広告には、本作に賭けるアニメ制作スタッフの意気込みが確かに現れていた。そのスタッフの布陣は1期そのままに、待望の2期が7月8日から放送開始となる。

TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd season PV

 強欲の魔女エキドナをはじめ、ガーフィール、リューズといった新キャラクターと、1期にちらりとだけ出ていたメイドのフレデリカ、そして1期終盤で男を見せた行商人のオットーなどを交えて、『Re:ゼロ』はどんな新展開を見せてくれるのだろうか。今から放送が待ち遠しい。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd season
7月8日(水)より、AT-X、TOKYO MX、BS11ほかにて放送開始
原作:長月達平(MF文庫J『Re:ゼロから始める異世界生活』KADOKAWA刊)
キャラクター原案:大塚真一郎
監督:渡邊政治
シリーズ構成:横谷昌宏
キャラクターデザイン・総作画監督:坂井久太
プロップデザイン:鈴木典孝、岩畑剛一
美術設定:金城沙綾(美峰)
美術監督:高峯義人(美峰)
色彩設計:坂本いづみ
撮影監督:峰岸健太郎(T2studio)
3Dディレクター:軽部優(T2studio)
編集:須藤 瞳(REAL-T)
音響監督:明田川 仁
音響効果:古谷友二(スワラ・プロ)
音楽:末廣健一郎
音楽制作:KADOKAWA
アニメーション制作:WHITE FOX
製作:Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会
(c)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活2製作委員会
公式サイト:http://re-zero-anime.jp/
公式Twitter:@Rezero_official

関連記事