TVアニメ『LISTENERS』は音楽ファン必見! 現実のロック史を巡るような“仕掛け”を読み解く

 さらに第5話の前半部分は、プリンスがサウンドトラックを手がけたスパイク・リー監督の映画『ガール6』(1996年)をなぞったような内容に。同映画にはクエンティン・タランティーノが本人役で登場するのだが、それと同じような役どころのキャラクターの名前が、タランティーノ監督の代表作『レザボア・ドッグス』(1992年)を連想させるレザボア(CV:木内秀信)だったりと、まさにタランティーノ作品ばりのマニアックかつ細かいオマージュで構成された回となっている。

 その他にも、物語のカギとなる10年前に行われたミミナシ掃討作戦「プロジェクト・フリーダムフェスティバル」のチラシが、1969年に開催されたロックフェス「ウッドストック・フェスティバル」のポスターデザインを模したものだったり、その掃討作戦の切り札として投入された祈手(プレイヤー)が、ウッドストックで伝説的なライブを繰り広げたことで知られるジミ・ヘンドリックスをモデルにしたジミ・ストーンフリーであることを考えると、本作には、ロックの故事や歴史を知っていればいるほど深読みできる仕掛けが、いたるところに張り巡らされているのではないだろうか。

 なおかつ『LISTENERS リスナーズ』が斬新なのは、音楽をテーマにした作品でありながら、今のところ劇中で音楽を奏でるシーンが一切登場していないことだ。祈手(プレイヤー)たちはアンプ型の装置・AMPを、イクイップメントと呼ばれる戦闘メカに変形させて戦うわけだが、例えば楽器を弾いたり、歌をうたうといったアクションを行うことはない。それどころか、第2話でミュウが鼻歌をうたうシーンがあるのだが、それに対するエコヲの「それ何?」という反応から察するに、そもそもこの世界では音楽や歌といった概念が存在しない、もしくは一般的なものではないようだ。

 おそらくこのあたりにミュウやミミナシの正体を含めた本作の謎が隠されているのだろうし、その「音楽という概念が存在しない世界」という設定自体が、「音楽」の根源的な魅力を描き出すためのトリガーになっているような気がする。まるで現実のロック史を巡るような、エコヲとミュウの旅路は、一体どのような結末を迎えることになるのか。アニメ好きはもちろん、普段アニメには馴染みがないという音楽ファンの人にこそ、ぜひ観てほしい作品だ。

■流星さとる
流浪の人。アニメ・声優・アニソン関連のライター仕事、よろず承ります。お問い合わせは【ryuseisatoru@gmail.com】までどうぞ。

■放送・配信情報
TV アニメ 『LISTENERS リスナーズ』
MBS/TBS/BS-TBS“アニメイズム”枠にて、毎週金曜25:55から放送中
Amazon Prime Videoにて独占配信中
声の出演:村瀬歩、高橋李依、釘宮理恵、花澤香菜、諏訪部順一、上村祐翔、八代拓、上田麗奈、銀河万丈、下野紘、田中敦子、本名陽子、ゆかな、千葉繁、大原さやか、日笠陽子、黒沢ともよ、佐藤利奈、 チョー、島袋美由利、中村悠一、大塚芳忠、水樹奈々、山寺宏一、福山潤
原案:1st PLACE
原作:1st PLACE・スロウカーブ・Story Riders
企画・プロデュース:スロウカーブ
監督 安藤裕章
ストーリー原案:じん、佐藤大、橋本太知
シリーズ構成:佐藤大
脚本:じん、佐藤大、宮昌太朗
キャラクターデザイン:pomodorosa
メカニックデザイン:寺尾洋之
アニメーションキャラクターデザイン:鎌田晋平
サブキャラクターデザイン、総作画監督:小泉初栄、高原修司
色彩設計:末永絢子
美術監督:谷岡善王
撮影監督:柳田貴志
CGI 監修:川原智弘
CGI ディレクター:後藤泰輔
3DCG:しいたけデジタル
編集:武宮むつみ
音響監督:小泉紀介
音響効果:西村睦弘
音響制作:dugout
楽曲プロデュース:じん
オープニング主題歌:ACCAMER「Into the blue’s」(DMM music/Astro Voice)
音楽:L!th!um
音楽制作:DMM music、清水聖太郎(EDWORD RECORDS)
アニメーション制作:MAPPA
(c)1st PLACE・スロウカーブ・Story Riders/LISTENERS 製作委員会
公式サイト:https://listeners.rocks
公式Twitter:@listeners_PR
Amazon Prime Video配信サイト:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B086BPH9KW/ref=atv_hm_hom_1_c_8syuGY_vPKOt1_1_1

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