『今夜、ロマンス劇場で』は日本版『ニュー・シネマ・パラダイス』? 数々のオマージュに注目

 そうしたオマージュの部分は、外国映画だけでなく日本映画にも及んでいる。例えば坂口健太郎演じる主人公の役名が牧野(日本映画の父、牧野省三であろう)、中尾明慶演じる友
人の名前が山中(これは山中貞雄であろう)、撮影所の所長は成瀬(これは成瀬巳喜男)で、柄本明演じる映画館の館主は本多(『ゴジラ』の本多猪四郎)と日本映画の偉人たちの名前を拝借。さらに主人公が所属する映画会社「京映」のロゴは丸の下部が山型になっており「大映」のロゴを彷彿とさせたり(しかも「京映」が辿る道も大映と同じだ)。そして何よりも、“人の温もりに触れると消えてしまう”ヒロインと主人公とのラブロマンスを成立させるために象徴的に登場するガラス越しのキスシーンは、言うまでもなく今井正監督の『また逢う日まで』のオマージュというわけだ。

 こうした様々な作品のオマージュ要素をまとめあげるかのように登場する、どこか懐かしい映画館の哀愁漂う雰囲気も実に魅力的な、本作のもうひとりの主人公だ。貸し切り状態の映画館で、自分の好きな映画を自ら映写して楽しむという点もグッとくるものがあるし、映画館のロビーや映写室内の美術にもついつい目を奪われてしまう。映画を作る場である撮影所のわちゃわちゃとした光景と、映画を流す場である映画館、そしてありとあらゆる過去の名作へと多方面に意識を向けた本作は、さしずめ日本版『ニュー・シネマ・パラダイス』と形容しても差し支えないだろう。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
土曜プレミアム『今夜、ロマンス劇場で』
フジテレビ系にて、5月16日(土)21:00~23:15放送(※一部地域を除く)
出演:綾瀬はるか、坂口健太郎、本田翼、北村一輝、中尾明慶、石橋杏奈、西岡徳馬、柄本明、加藤剛
監督:武内英樹
脚本:宇山佳佑
音楽:住友紀人
主題歌:シェネル「奇跡」(ユニバーサル ミュージック)
(c)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

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