『エール』二階堂ふみの「晩秋の頃」が届けた思い 志村けんさんへの追悼の意とも重なる歌詞

『エール』二階堂ふみの「晩秋の頃」が届けた思い 志村けんさんへの追悼の意とも重なる歌詞

 NHK連続テレビ小説『エール』第5週「愛の狂騒曲」では、豊橋で初めて顔を合わせた裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)の恋が、文字通り騒々しく展開していった。国際作曲コンクールで二等を受賞し、未来の作曲家として期待され始めた裕一と、彼に憧れていた歌手志望の音が周りの反対を押し切って婚約。さらに、“初めての共同作業”ともいえる豊橋での演奏会で、二人は同じステージに立った。

 演奏会直前、いつもは勇敢な音が珍しく弱気な表情を浮かべていた。御手洗(古川雄大)に「休ませることも大事よ。あなた頑張りすぎるところがあるから」と注意されていたにもかかわらず、前日まで練習による酷使で喉を痛めてしまったからだ。普段は音に比べて弱気な裕一の方がなぜか落ち着いている。音の震える手を取り、「僕も一緒だ。大丈夫!」と声をかけた裕一の姿は、教会の聖歌隊と一緒に歌いたくなった幼い頃の音に「行っといで。大丈夫、何とかなるから」と背中を押した亡き父・安隆(光石研)の姿と重なった。

 ついに演奏会がスタートし、裕一は父・三郎(唐沢寿明)の寝ている姿からイメージを膨らませた楽曲「いびき」で指揮を取る。その鬼気迫るメロディとは対照的に穏やかな音楽が流れ、ついに音が歌を披露する番になった。音は歌い始めるが、どうしてもいつもの調子が出ない。安隆との思い出をもとに歌詞を作成した梅(森七菜)に、「家族のために最高の歌を歌う」と約束したことを思い出した音は、このままではその約束を果たせないと思ったのか、演奏の途中で歌うのをやめてしまった。

 茫然とする音に、裕一はまたしても「音楽は心だ。心から思いを乗せて歌えば、きっと伝わる」と励ましの言葉をかける。そのまま観客の方を向き、ひと笑い取った裕一が「声が出づらくなっていますが、僕は彼女の歌声が聴きたいです。皆さんはどうですか?」と問いかけると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。

 大盛況のうちに幕を閉じた裕一と音の演奏会。しかし、二人にプチトラブルが発生。チケットの取り分は50:50と約束していた演奏会起案者の鶴亀(古舘伊知郎)が金を持ち逃げしたのだ。「楽しかったからいいんじゃない?」と楽観的な裕一に対して、怒り狂う音だったが、上京する前日に為す術もなく泣き寝入りすることになった。

 音と共に東京で出る姉の吟(松井玲奈)の提案で、裕一は関内家の人たちと共に安隆の魂が眠る海を訪れる。野望を海に向かって叫ぶ姉妹。音は願いの代わりに、演奏会で披露した「晩秋の頃」を歌った。

〈過ぎし日は刹那 懐かしき小道/優しい面影 心に灯して〉

 それは光子(薬師丸ひろ子)と三姉妹が安隆の死を受け止め、家族一緒に過ごした日々を愛しく思えるまで道筋を辿ったような楽曲だった。あれから時が経ち、笑顔を取り戻した音の側には、婚約者の裕一がいる。音を産んでくれたことへの感謝を海に向かって叫んだ裕一に、光子は「産んだのは私。あの人はただおろおろしとっただけ」と苦笑い。慌てる裕一の姿は、やはり安隆に似ているのだった。

 優しい楽曲が音たち家族を包んだ頃、音楽界の重鎮である小山田耕三(志村けん)が裕一の活躍を耳にしていた。「本物か紛い物か、楽しみだね」と表情を変えず、裕一を取り上げた新聞を見る小山田の意図は見えない。彼は新たな芽を潰そうとする人間なのか、はたまた裕一にエールを贈る存在なのか。それはまた、次週からの展開で明らかとなる。

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