『時をかける少女』追悼放送に寄せて 大林宣彦監督が作り手たちに与えた計り知れない影響

 4月10日に逝去された大林宣彦監督をしのび、『時をかける少女』が4月18日に日本テレビ(関東ローカル)にて放送される。

 昨年話題となったドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)で主演を務めるなど、現在まで第一線で活躍を続ける原田知世の映画デビュー作が『時をかける少女』だ。同映画の主題歌「時をかける少女」も大ヒットを記録し、原田は一躍スターダムへと駆け上った。現在まで語り継がれる本作の魅力について、映画ライターの杉本穂高氏は次のように語る。

「公開から約40年経ったいま観ても、“新しい”としかいいようがない演出を大林監督は序盤から行っています。映画の冒頭はモノクロのスタンダードサイズの画面から始まり、段々とカラーになっていく。映画は夢に例えられることがよくありますが、大林監督が作り出す映像は、まさに“夢”の中を彷徨っているような感覚になります。そして、原田知世さんの溢れんばかりの魅力。原田さんは本作が映画デビュー作ということもあり、決して“演技がうまい”という感じではないのですが、誰もが目を奪われてしまう主役としての輝きを放っている。また、大林監督が原田さんの一番かわいい、一番きれいな表情を見事に引き出しています。大林監督ご自身もおっしゃっていましたが、本作にはいつの時代も通用する“ロマン”と“普遍性”があります。尾道という古き良き日本の町並みと、原田さんの清純な雰囲気が見事にマッチしている。原田さんと同世代の方はもちろん、どんな世代が観ても、本作にノスタルジックな青春を感じられることが、現在まで語り継がれる理由のひとつになっていると思います」

 また、大林監督が後の作家たちに与えた影響は計り知れないと杉本氏は続ける。

「大林監督は『映画を発明したエジソンが憧れの人』とインタビュー(引用:AR三兄弟長男・川田十夢さんが、映画作家・大林宣彦さんに聞く、「これからの映画の可能性」|QONVERSATIONS)で語っていましたが、大林監督自身も常に新しい表現を発明し続けた作家だと言えます。従来の日本映画界では撮影所で助監督経験を経て監督デビューするものでしたが、そんな時代の中で、大林監督は自主映画からキャリアをスタートさせ、CMでディレクターを経て、商業映画の世界に入っていきました。今となっては珍しくないステップアップかもしれませんが、当時は限りなく少数派だったわけです。撮影所システム以降の新たな映画監督のあり方として、大林監督が最初のモデルになったと言えます。また、『時をかける少女』は、その後幾度となく映像化されてきました。“原作”は筒井康隆さんの小説ですが、その後の映像作品は、大林版が“原点”と言っていいと思います。大林版を軸にそこからどう変化させるか、あるいは近づけるか、という試みで作られてきたのは間違いありません。また、美少女、青春、ノスタルジー、という要素は、現在の多くのアニメに欠かせない要素になっています。岩井俊二監督も大林作品が大好きと公言していますし、新海誠監督作品にもその影響がありありとみえますが、多くのアニメ作家たちが意識的にも無意識的にも、本作から多大な影響を受けていることは間違いないと思います。筒井さん自身が本作のことを『元祖ライトノベル』とおっしゃていましたが、2010年代に花開いた日本のサブカルチャーの原点が大林作品にあったと言っても過言ではないと思います」

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