『家族を想うとき』と『わたしは、ダニエル・ブレイク』は“希望の灯り”に ケン・ローチの熱い想い

 ケン・ローチ監督が、『家族を想うとき』や、『わたしは、ダニエル・ブレイク』で、現代の問題を通して真に描いているのは、過酷な状況で生きている人々がいるという現実はもちろん、何よりもそこで人間の尊厳がないがしろにされているという事実である。人間は、どんなに厳しい状況に立たされたとしても、最低限の尊厳を持って生きる権利がある。だが、現在の格差社会は、その最後の砦すら破壊し、困窮者を人間以下の存在にまで貶めようとしているように感じられる。

 ケン・ローチ監督の素晴らしいのは、それをただ情によって訴えるだけではなく、このような人間性を破壊しようとする社会システムの問題点をしっかりと整理して、改善の道筋を示しているところだ。格差問題を扱う映画は数あれど、ここまで丁寧に、そして戦略的に一つの映画作品としてまとめ上げる手腕は、さすがと言わざるを得ない。その意味で、ケン・ローチ監督は現代に最も必要とされるクリエイターの一人であるといえよう。

『家族を想うとき』

 『家族を想うとき』と『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、いまを生きる人々にとって、闇に包まれつつある社会を照らす希望の灯りになり得る作品だ。引退を撤回してまで、この作品を撮りあげたケン・ローチ監督の熱い想いと、いま横たわっている最も深刻な現実の姿が、多くの人々に伝わってほしい。そして、現状を打開する糸口となってくれればと願っている。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■リリース情報
『家族を想うとき』
6月17日(水)Blu-ray&DVD発売

【Blu-ray】本編ディスク1枚
価格:4,800円(税別)
収録時間:本編100分+特典映像
スペック:片面1層/カラー/DTS-HD MasterAudio 5.1ch, リニア PCM2.0ch/16:9 ビスタサイズ

【DVD】本編ディスク1枚
価格:3,800円(税別)
収録時間:本編100分+特典映像
スペック:片面1層/カラー/ドルビーデジタル 5.1ch, ドルビーデジタル 2.0ch/16:9 ビスタサイズ

※ジャケット及び仕様・特典等は予告なく変更になる場合がございます。あらかじめご了承下さい。

出演:クリス・ヒッチェン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター、ロス・ブリュースター
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
製作:レベッカ・オブライエン
撮影:ロビー・ライアン
音楽:ジョージ・フェントン
提供:バップ、ロングライド
発売・販売元:株式会社バップ
2019年/イギリス、フランス、ベルギー/原題:Sorry We Missed You/日本語字幕:石田泰子
(c)Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation,France 2 Cinema and The British Film Institute 2019
公式サイト:https://longride.jp/kazoku/

『わたしは、ダニエル・ブレイク』
Blu-ray&DVD好評発売中

【Blu-ray】本編ディスク1枚
価格:4,800円(税別)
収録時間:本編100分+特典映像
スペック: 片面二層/カラー//1080pHigh Definitionビスタ/音声:1. 英語DTS-HD Master Audio5.1ch、2.英語リニアPCM2.0ch /字幕:1.日本語字幕

【DVD】本編ディスク1枚
価格:3,800円(税別)
収録時間:本編100分+特典映像
スペック:片面二層/カラー/16:9ビスタ/音声:1. 英語ドルビーデジタル5.1ch、2.英語ドルビーデジタル2.0ch /字幕:1.日本語字幕

出演:デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズほか
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
2016年/イギリス、フランス、ベルギー/原題:I, Daniel Blake/日本語字幕:石田泰子
(c)Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2016

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