伊藤英明が一番大切な人のために病室で唱えた念仏 『念唱』最終回が示した答え
新たな命の誕生もあれば失う命もある。『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)の最終話では、どの命も平等であることが描かれた。本作は1話から死を通して生きることを一貫して描いてきたが、最終話にして未来の尊さを感じさせる展開となった。
通り魔事件の発生で重症患者の処置にあたる松本(伊藤英明)だったが、偶然鉢合わせた犯人の自殺を止め、切り傷を処置し命を救う。そんな姿を見た、通り魔事件での重症患者の娘である尚(谷花音)が、松本に対して犯人を救う意味がわからないと糾弾する。しかし尚の母が回復した後、尚は松本の元を訪れ、「お医者さんになりたくなった」と告げた。
一方、松本の友人である憲次(泉谷しげる)が家で倒れ救急搬送された。憲次の肺がんは脳に転移しており、完治させるのは難しい状態だと発覚する。肩を落とす松本だが、憲次はあおば台病院で入院しながら、松本の同僚である三宅(中谷美紀)や児嶋(松本穂香)、濱田(ムロツヨシ)らと過ごす。彼らは松本の親友である憲次に、自身の親友であるかのように大切に接していた。しかし憲次は延命治療を拒否しており、ある日眠りながら息を引き取ってしまう。憲次を見送ろうとする松本は多重事故の患者の受け入れで呼ばれてしまい、迷いながらも患者の元に走る。
最終話では、医局で松本らが命の重さについて議論する。松本が、ある徳の高い僧侶がした「もし川に妻と母が同時に落ちたらどちらを助けるか」という問いを児島や田中(片寄涼太)にする。口々に母か妻かを選ぶ医師たちであったが、松本の問いの答えは「近い方(を選ぶ)」というものだった。命は皆平等、これこそが仏教の考え方なのだと松本は説き、一同を合理的だと唸らせる。
しかし、その後松本は目の前の患者の対応を差し置いて、憲次が救急搬送された現場に走ってしまった。この行動はまさに、仏教の教えに背いていたが、三宅は松本の人間らしさを「10段階で、10」と評価する。「愛も情も使命感も全部煩悩だっていうなら、煩悩上等!」」と、松本が“欲”のままに動いたことに共感した。松本にとって幼少期の友人の事故以来、“救うことと見送ること”はずっとついてまわっている。そんな松本にとって、この一種の煩悩は重要な心の動きだったように感じた。