『トップナイフ』最終回、天海祐希×桜田ひよりは理想の母娘に 天才医師たちが歩むそれぞれの道
ついに最終話を迎えた『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)。天才医師たちが難手術に立ち向かう“医療ドラマ”の様相を呈しながらも、その実は、より人間の心の奥底に肉薄した上質な“人間ドラマ”を描くことに注力していた本作。その最終話にしてようやく、孤高の天才脳外科医たちを取り巻く「家族」との関係性にメスが入る。模索しながらも、個々にとっての最適な答えを導き出そうとする人々の葛藤と決意。なかでもエモーションを残すのは、本作の主人公・深山瑤子(天海祐希)とその娘・真実(桜田ひより)が歩むことになった別々の道だろう。
家から出てくる母親を娘は待ち伏せして驚かそうとするも、「仕事」への道筋を一直線に伸ばしてしまった母親はその健気な存在に目も暮れることなく、遠くのほうへと走り去っていってしまう。真実が抱える「お母さんは私のことが嫌いなんじゃないか」というトラウマは、別々の世界に生きているのだと痛感させられたこの幼少期の体験に端を発していた。そんな膠着した関係も、真実が深山の家に転がり込むことで徐々に融解していき、ごく一般的な母と娘らしい姿を見せるようにもなっていく。しかしながら、ふたりの距離が近づけば近づくほど、深山が家族を省みることの限界点を知ることになるし、真実はずっと逃げてきた自分の問題に立ち向かう必要に迫られていく。
最終話では、“急いでいる深山を誰かが引き止める”という描写が何度も繰り返される。まずは真実の義母が、その次には真実の父親が病院に訪れ、「真実を返してほしい」と深山に訴えるだろう。娘から声をかけられても気にも留めなかったあの頃とは明らかな対比があり、深山は急ぎながらも耳を傾ける余裕ができている。それでいて彼女は言う、「どうするかはあの子が決める。(真実の生き方は)私が決めることじゃない」と。深山はもう若くて仕事で精一杯だったころの母親ではないし、真実ももう子どもではない。お互いが相手の生
き方を尊重しながら、よりよい関係性を模索していけるフェーズに突入している。
「お母さん! わたし決めた。もう逃げない、絶対。自分のことは全部自分で引き受ける。さようなら!」深山を引き止めた真実はそう朗らかに言ってみせ、あの時とは逆に今度は彼女のほうが一度も振り返ることなく、深山とは別の方向に向かって力強く歩いていく。あれだけスッキリした顔をしていたのだから、彼女たち母娘にとってはこれが正しい選択であったに違いない。家族はときに迷い、立ち止まりながらも、ついに自分たちらしい関係性に巡り合う。