考察カルチャーがドラマの未来を左右する!? 今期ドラマに見る、『あな番』以降の深い関係性

考察ドラマの潮流を追う

 考察をメインに据えた、いわゆる「考察サイト」は、直近の放送に対する考察と、前回予想との答え合わせ、次回の予想を含んでいる。その他に、登場人物や時代背景などテーマ別の考察を含むものもあり、情報量では公式サイトを上回るものもある。

 国民的人気を誇る漫画やアニメでは、こういった考察サイトはすでに定番になっているが、そこで重要な役割を果たしているのが「ネタバレ」と「伏線回収」だ。考察に際しては、作品を未見の読者・視聴者にどこまで内容を知らせるかという判断が求められる。

 また、各所に張り巡らされた小さな謎を解くことで、犯人やトリックなどストーリーに関わる大きな謎を解き明かすのがミステリーの常道だが、犯人と同じ目線で謎に挑む読者や視聴者には作品中でヒントが示されることが多い。こうした伏線を指摘し、答えを的中させることが謎解きのカタルシスを生んできた。

 二次創作と並んでファンカルチャーを象徴する考察ブームだが、考察を積極的に取り入れたのが『あな番』だった。主演の田中圭は『あさイチ』(NHK総合)のインタビューに答えて、「自分たちは伏線じゃないつもりだったけど、見てくださっている人たちがすごい伏線になる(と言う)から、『やばい、これも回収しなきゃ。どうしよう』というのはけっこう現場で話していました」と視聴者の考察を芝居の参考にしたことを明かしている。

 『あな番』では、動画配信サービス「Hulu」と連携したオリジナルストーリー『扉の向こう』が配信されるなど、作品をさらに楽しむための仕掛けが随所に施されており、視聴者の考察を誘発するこれらの仕組みは、同枠後続の『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(日本テレビ系)や『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日本テレビ系)にも引き継がれている。

『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(c)読売テレビ

 伏線回収に拘泥することで映像作品としてのドラマのダイナミズムが失われることを危惧する声もあるが、作品を積極的に掘り下げることは、情報を一方的に受け取る側だった視聴者がドラマに対する関心を深め、結果的にコンテンツの魅力を増すことにもつながる。また、相対的にインターネットに触れる機会の多い若年層に作品への入り口を提供する意義もある。考察カルチャーがドラマの未来を左右するポテンシャルを秘めていることは間違いない。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/

水曜ドラマ『知らなくていいコト』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、重岡大毅(ジャニーズWEST)、秋吉久美子、佐々木蔵之介、小林薫、本多力、小林きな子、和田聰宏、山内圭哉、関水渚、森田甘路、今井隆文ほか
脚本:大石静
演出:狩山俊輔、塚本連平ほか
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈、久保田充、大塚英治(ケイファクトリー)
(c)日本テレビ

『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜23:25放送
出演:清野菜名、横浜流星、山崎樹範、吉田美月喜、中田圭祐、祷キララ、山口紗弥加
監督:遠藤光貴
脚本:佐藤友治、蛭田直美
チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー:福田浩之(読売テレビ)、馬場三輝(ケイファクトリー)、千葉行利(ケイファクトリー)
共同プロデューサー:池田健司(日本テレビ)
制作協力:ケイファクトリー
制作著作:読売テレビ
(c)読売テレビ
公式サイト:https://www.ytv.co.jp/shirokuro/
公式Twitter:@shirokuro_drama
公式Instagram:@shirokuro_drama

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