『スカーレット』にとって格闘技とは? 喜美子の柔道、武志のキックボクシングに込められた精神

『スカーレット』にとって格闘技とは?

 女性陶芸家として道を切り開く主人公のライフヒストリーをたどる連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)では、格闘技に関する描写が折に触れて登場する。主人公・喜美子(戸田恵梨香)にとって陶器のかけらとともにお守り代わりになっている柔道や、家庭のシーンに登場するキックボクシングをはじめ、格闘技が物語を推進するキーになっている。

 喜美子と柔道の出会いは少女時代。大阪の闇市で暴漢に襲われていたところを父・常治(北村一輝)が助け、そのまま信楽に連れてきた草間(佐藤隆太)には柔道の心得があり、第7話で川原家にやって来た借金取りを一本背負いで撃退。子どもたちを相手に柔道を教えることになった。「本当の優しさとは何か。本当に強い人間とはどういう人間か。そして人を敬うことの大切さを学んでほしい」と教える草間流柔道は、喜美子の人生の精神的支柱になっていく。

 嘉納治五郎が始めた柔道は1931(昭和6)年に学校の正科目となり、戦後は全国に普及。1964(昭和39)年の東京オリンピックで男子の正式種目として採用された。このあたりの事情は、前期大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合)ともリンクしてくる部分だ。

 大阪の荒木荘では、住み込み女中の喜美子を先頭に「草間流柔道」の掛け声から「とやー!」の唱和が朝礼代わりになっていた。また、同じく草間から柔道を習った同級生の信作(林遣都)は、川原家の三女・百合子(福田麻由子)と結婚の承諾を得るため、照子(大島優子)と柔道の特訓を行うなど、「礼に始まり礼に終わる」柔道は、『スカーレット』では人と人をつなぐコミュニケーションツールの役割を担っている。

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