飯豊まりえ×稲葉友が明かす、映画『シライサン』が持つ新しい怖さ 「ホラー映画の良さをあえて削ぎ落とした」
稲葉「絶対に抗う術がないのとはまた違うからこそスリリング」
ーー今お話ししている中でもお二人の仲の良さが伝わってきます。撮影現場でもこのように和気あいあいと?
稲葉:ロケバスで喋ってる時間が多かったよね。
飯豊:ね。キャストさんが少なかったですし。
稲葉:定食食べに行ったね。お魚食べました。
飯豊:コーヒーも飲みに行ったよ。この作品について、真面目な話をして。撮影ももう少しだけど、一生懸命いいもの作ろうねと。
ーーお二人にとって思い出深い撮影だったんですね。
飯豊:地方での撮影だったので、ご飯を食べる場所も限られてるから自然に「一緒に行こう」って。でもとっても早く感じました。不気味なところで撮影してたので、撮影中は毎日、早く過ぎろと思っていたんですけど。
稲葉:飯豊は常に怯えてましたね。
飯豊:撮影前のお祓いの時に住職さんが私の名前間違えてたから、これはもう呪われたと(笑)。でも立ち向かっていかなければと意気込んで現場に行ったら、友くんがけっこうスンとしているので。
稲葉:最初は飯豊を「大丈夫だよ」とする係でした。僕はマネージャーさんから「飯豊さんは絶対お祓いしたいらしいけど、稲葉はそのタイミングはスケジュール的に行けないけどどうする?」って聞かれて。断りました。
飯豊:それも嫌だったんです。私だけお祓いして他の人が憑いちゃったらどうしようと。
稲葉:あなたが祓ってくれたらみんな憑かないから。
ーー「シライサン」という架空の怪談をモチーフにしていますが、目を逸らしてはいけない中で恐怖の表情を作るのが本作のひとつ見どころなのかなと。
飯豊:難しかったです。制限がありましたからね。それでけっこう悩んで、定食屋でその話をしました。もっと大きくリアクションしたいとか、この演技で怖がってもらえるのかなとか不安になって。でも実際に完成した作品を見ると、それがリアルなのかもしれないなと思いました。実際にお化けとか架空のものが出てきたらリアクションも大きくならないのかなと。
稲葉:『シライサン』が面白いのは、目を逸らしたら死ぬという制約があって、それは逆に目を逸らさなければ生き残れる可能性があるというところ。絶対に抗う術がないのとはまた違うからこそスリリングですよね。
飯豊:自分次第なところがあるからね。
稲葉:その希望に賭けて必死に向かっていく人が面白い。それが今回は際立っていて。それこそ普通に生きていて女の子を怖がらせたら怒られるじゃないですか。でもホラー映画なら女の子が怖がっているところが見れる、そこもホラー映画の良さなのに、あえてそこを削ぎ落としたのはすごいなと思いました。
飯豊:それは思った。でもだからこそ難しかったな。ある意味挑戦でしたね。
ーー今作、小説家の乙一さんが監督をやられています。監督の印象はいかがでしたか?
稲葉:安達さんが独特だよね。
飯豊:うん。
稲葉:「優しい」というのが本当によくわかる。お話ししていても、僕らに対する言葉遣いや指示の出し方をとっても、本当に優しい方なんだなというのがすごく伝わってきて、それが作品の随所に反映されているんです。
飯豊;でも最後打ち上げの時に「人々を絶望的な気持ちにさせたい」とおっしゃっていて……。
稲葉:そうそう! だから「やばいじゃん!(笑)」ってね。だから渦巻いているものがあるのかなと。面と向かって話すと感じないけど、根源には何かがあって、だから独特に思えるんだなと感じましたね。
ーー撮影中にそういった片鱗は?
稲葉:そういったクレイジーさは全く感じなかったです。
飯豊:ディレクションも「リアクションちょっと抑えめで」みたいな。