『ルパン三世 THE FIRST』が描いた“変わらなさ” 新しいフォーマットで生き続ける一味たち

3DCG版『ルパン三世』が描く“変わらなさ”

 そして話に絡む純粋無垢なヒロインと、世界征服を企む悪役。国民的アニメらしく登場人物たちが、どんなキャラクターか説明されることもない。映画単体で見れば、“いつもの”『ルパン三世』であり、目新しさは感じられない。しかし、その「いつも通りさ」こそが狙い通りのものであり、ルパンたちが普段と同じことをしているからこそ、美麗でリアルな3DCGアニメとなった特性が際立つ。

  3DCGだからこそ光る展開もある。1960年代前半のパリを丁寧に活写し、ナチスドイツの残党が話に大きく絡んでくるし、『インディ・ジョーンズ』シリーズのように未知のテクノロジーによるとてつもない破壊兵器が登場。終盤の大スペクタクルシーンは3DCGならではの迫力だ。

 またルパン三世の祖父である、初代ルパンとの絆も言及され、シリーズの中でも最も知名度と人気のある『カリオストロの城』のオマージュも多用される。屋根から屋根への大ジャンプやおなじみの黄色い車でのカーチェイス、更にはルパンと純情なヒロイン・レティシアとのロマンスも、かつてのクラリスを彷彿とさせるのだ。

 だが上記の要素は本作のお涙頂戴の展開に使われることも、社会派なメッセージを送るために使われることはない。あくまで93分の上映時間を彩る要素としてしか扱われないのだ。ファミリー向けとは言いつつも、クールでドライな『ルパン三世』ならではの味わいをしっかり再現しており、どこまでいっても『ルパン三世 THE FIRST』は気軽に楽しめるエンタメ作品という姿勢を崩すことはない。だからこそ、その気軽さが気持ちいい。毛穴が見えるくらいリアルな3DCGになろうがルパン一味は変わらない。彼らは通常運転で冒険を繰り広げる。

 モンキーパンチ先生が亡くなり悲しみに暮れていたファンが多い中、3DCGという新しいフォーマットでいつも通りな『ルパン三世』を再構築した本作の意義は非常に大きい。創造主がいなくなったとしても、ルパン一味は新しい形で生き続け、観客にスリルと冒険を提供し続けるのだ。『STAND BY ME ドラえもん』の時のように原作にあるエピソードを再現することもなく、オリジナルストーリーであるにも関わらず、「まぎれもなく『ルパン三世』」な一作だった。

■シライシ
会社員との兼業ライター。1991年生まれ。CinemarcheやシネマズPLUSで執筆中。評判良ければ何でも見る派です。

■公開情報
『ルパン三世 THE FIRST』
全国公開中
声の出演:栗田貫一、小林清志、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、広瀬すず、吉田鋼太郎、藤原竜也
監督・脚本:山崎貴
原作:モンキー・パンチ
音楽:大野雄二
(c)モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会
公式サイト:lupin-3rd-movie.com

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