『いだてん』は日本屈指の“特撮ドラマ”だった! 最終回の国立競技場にはVFXの総力を結集

『いだてん』は日本屈指の“特撮ドラマ”だった! 最終回の国立競技場にはVFXの総力を結集

 12月15日の放送をもって最終回を迎えるNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』。先日掲載した取材担当・渡辺直樹へのインタビュー記事のとおり、想像を絶する調査のもとに本作は作り上げられてきた。膨大な資料を宮藤官九郎が脚本にし、それを役者たちが演じていく。そして、最後に加わるのが映像をさらに豊かにするVFXだ。

 『いだてん』のVFXスーパーバイザーを務めたのは、映画『シン・ゴジラ』も手掛けている尾上克郎。近現代という“最も難しい”とされる町並みをVFXチームはどのように作り上げていったのか。

適度に本物で適度にデフォルメ

ーー尾上さんはどんな形で『いだてん』チームに参加されたのでしょうか。

尾上克郎(以下、尾上):最初にチーフ演出の井上(剛)さんから「とにかくいろいろお願いします」と依頼がきました(笑)。本当にその言葉通りで、この歳になって“初めて”がこんなにあるのかと思うほど、これまでの日本ドラマ界にはなかった新しい試みを沢山やらせていただきました。初の4KHDRの連続ドラマということで、僕らにもノウハウが殆どなかったんです。超高画質映像ということもあり、今まで通りのやり方では、仕上げることすら出来ないだろうなと恐怖すら覚えました。しかも、井上さんから「CGののっぺりした画が嫌いなんですよね……」なんて話があって(笑)。こう言われたら、CGに頼りっぱなし、みたいな考えでは納得してもらうものは作れないなと。そこでフィルム時代から慣れ親しんでいるミニチュアとCGを組み合わせる方法で行こうと決めました。 CGにせよミニチュアにせよ、どちらか一方に頼り切ってしまうと、納得のいく画を仕上げることはとても難しくなります。CGとミニチュアのいい部分をいかに上手く組み合わせていくか、その試行錯誤の毎日でした。

ーー第1回から「日本橋」が印象的に登場しますが、ひとつの軸にするような意図はあったのでしょうか。

尾上:『いだてん』が描く東京で、ずっと変わらずにそこにあるのは日本橋と皇居の周辺ぐらいなんです。金栗四三(中村勘九郎)と共に時代の移り変わりを映す上でも、日本橋を中心にしようというのは初期から井上さんと相談していました。

井上剛(取材に同席したチーフ演出。以下、井上):多くの人が見知っている場所なので、誤魔化しがきかない分、本当に大変だったと思います。

尾上:「適度に本物で適度にデフォルメ」というのが本作の大事なところです。史実を再現するだけでは視聴者の方々にも伝わるものも伝わらない。その点はかなり気を遣いました。

井上:第1回放送後には、「『シン・ゴジラ』みたい」という感想も視聴者からあったそうです。

尾上:『シン・ゴジラ』と『いだてん』の共通する部分としては“街”を描いているというところでしょうか。その点はたしかに意識していました。いわゆるゴジラ映画などの特撮作品のミニチュアは、1/25スケールで作成していきます。でも、そのサイズだとどうしても描ききれない細かい部分が出てくる。もちろん、スケールを大きくすればより本物にも近づくので、今回は1/18スケールというかなり大きなサイズのミニチュアを一から作りました。

 また、ミニチュアは室内で撮るよりも、屋外の太陽光で撮った方がよりリアルに見えてきます。ただ、その分難しさもありまして……。目をこらして作品を観ていただければ分かるかもしれないのですが、演出チームが撮ったお芝居の映像と、奥にあるミニチュア撮影の背景映像は、光線の方向や強さが違うんです。CGであれば、芝居の映像に合わせて光の角度などをすべて計算して“正しい”ものにしていきます。でも、それだと、理由はよくわからないんですが、井上さんが言っていたように「のっぺり」した映像になってしまうことが多い。光線の方向は揃ってなくても、手で作ったミニチュアならではの影や光、歪みが独特の面白さ、雰囲気を生み出してくれると感じています。

ーー日本橋の風景は各時代ごとに様変わりしていきますが、ミニチュアもその度に作り直しを?

尾上:そうですね。四三が上京する明治中期から大正初め、関東大震災の直前、震災復興後、昭和の戦前戦後と、高速道路が完成する前後というように、各時代に分けて周辺の街並みのミニチュアを作りました。時代ごとに写真や資料から大きさなどを割り出し、図面化して作ってます。大変だったのは、演出チームがどうやって日本橋のシーンを撮るかわからないところ。

 一般的には、僕らが撮った背景をベースにそこに人間をどう配置して、お芝居をするかを考えてもらい、映像を合わせていきます。でも、その手順では演出やカメラワークに制限をつけてしまいがちで、ドラマが面白くならない。それを避けたかったので、どんなアングルで撮ったお芝居でも、後から背景の街並みを選べるようにしておくことにしました。ミニチュア内に何か所か定点を決めて、カメラを置いて全天周360度を撮影します。そのデータをもとにコンピュータ上に3次元空間を立ち上げて、演出チームが撮影した役者さんたちの芝居をその空間内に合成していきました。そこに車や空気感、足りない建物などをCGで加え、背景と演技が違和感なくシンクロするように様々な調整をしていきました。

 今はその正解のルートが見えてきたのでこうやって振り返ることができますが、どれだけ技術が発達したからといって、すぐになんでもできるわけではありません。使い慣れた既存の技術と最新技術をどう組み合わせていくか、その方法論を考えることが本当に大変でした。

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