ティモシー・シャラメ、なぜ日本でも人気が沸騰? 『君の名前で僕を呼んで』以降の活躍を振り返る

 2019年も残すところあと1か月。今年公開された洋画作品の一覧にざっと目を通してみると、1月の『シークレット・チルドレン 禁じられた力』を皮切りに、4月には『ビューティフル・ボーイ』、8月に『HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ』、9月に『荒野の誓い』、11月に『マイ・ビューティフル・デイズ』が公開されており、ほとんど常にティモシー・シャラメの出演作を劇場で観ることができる状態だったことがわかる。さらに11月8日からはNetflixで主演作『キング』の配信もスタートするなど、全部で6作品。しかもそのうち半分が北米から2年から4年遅れての日本上陸となったわけだ。

『マイ・ビューティフル・デイズ』(c)2016Young Dramatists, LLC.All Rights Reserved.

 日本でもスマッシュヒットを記録したルカ・グァダニーノ監督の『君の名前で僕を呼んで』で第90回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、同作と『レディ・バード』がそろって作品賞候補に挙がったことで、一躍新たなスター候補として注目を集めたティモシー。出演作が遡及して劇場公開されるというのは、紛れもなく日本でその人気が高騰している証といえよう。ちなみに現時点で世界のいずれかの場所で公開済みの出演作品(劇場用長編映画)は14本。そのうち12本がすでに日本に上陸済みで、残すはキャリア初期に出演したインディペンデント映画『Worst Friends』と、紆余曲折あって今夏からヨーロッパを中心に順次ひっそりと公開しているウディ・アレン監督の『A Rainy Day in New York』のみということになる。

『君の名前で僕を呼んで』(c)Frenesy, La Cinefacture

 思い返してみれば『君の名前で僕を呼んで』が日本に持ち込まれた際、ティモシーには“ディカプリオの再来”という、これまでも何人かの若手美形俳優に与えられてきたフレーズが帯同していた。少なくとも、そのフレーズを背負わされた俳優の中では最もふさわしい存在であることは言うまでもない。映画デビューから数年足らずでアカデミー賞候補にあがり、小規模ながら良質な青春映画で何作も主演を飾り、青春スターとしての地位を確立。もっとも、10作目で『タイタニック』までこぎつけたディカプリオは、彼自身が持ち得る確かな演技力もさることながら、幾分か映画を取り巻く時代の流れが味方したような気もしないでもない。

『君の名前で僕を呼んで』(c)Frenesy, La Cinefacture

 そんなディカプリオ熱が世界規模で高まっていた20数年前と比較しても、いまは日本に入ってくる海外映画作品こそ少なくなった印象を受けるものの、作品のバリエーションも出演者も多様化。しかも海外スターの情報を容易に入手できる時代となっているのである。そうした中で、なぜティモシーがこれほどまでに日本で人気が出たのか。もちろんそれには幾つかの要因が考えられる。たとえばどの角度から見ても目の保養になる安定した美貌と、時折見せるアンニュイな表情のギャップといったある種アイドル的な魅力を持ちながらも、そこに確かな演技力が付随している点。こうしたタイプの海外俳優は、たしかにディカプリオ以降ごく数人しかいないだろう。さらに大作メジャー映画で一瞬にしてポップな存在になったのではなく、『君の名前で僕を呼んで』という極めて規模の小さな文芸作で脚光を浴びたという点も映画ファンがそそられる部分といえよう。

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