渡辺淳之介×GANG PARADE ヤママチミキ×岩淵弘樹監督特別鼎談
『あゝ無情』は一番“面白い”ドキュメンタリー映画に 第2期BiS解散を通して見えたWACKの精神性
映画の中に刻まれたWACKの精神性
——渡辺さんは、第2期BiS解散の赤坂BLITZで、メンバーのMCに「くっだらねえこと言いやがってバカ」ってずっと文句を言っていましたね。
渡辺:「最後まで理解しないで去っていくんだな」って。「ざまあみろ」とか何言ってるんだろうな、「いや、おまえがざまあみろだろ」って。
——今回の映画を、第2期BiSのファンが見たら激怒するかもしれないですよね。
渡辺:刺されるかもしれないですね(笑)。でも、良識的な大人が見たら、どう考えても彼女たちと一緒に仕事をしたくないと思うので、「わかるんじゃねえかな」とは思ってますけどね。まあでも、これが別に解散の真相ではないというか……遅かれ早かれこうなるであろうものを、ちょっと早めに僕が閉じたというだけなので。YUiNA EMPiREは、今何もなかったかのごとくCARRY LOOSEとかやってますけど、あのときは「アイドルなんかやらない、みんな信用できない」とか言ってたじゃないですか。なのに、今は「信じてやっていこうね!」みたいな(笑)。あのときのあの子たちは、本当に関わり合いになりたくないぐらい負のオーラを放っていて、解散発表するまでツアーも売り切れなかったわけですよ。だからお客さんももうわかってたんですよ、楽しそうじゃないって。
——映画の中で、BiSとGANG PARADEは、集まったときに雰囲気が真逆に見えたんですよ。ヤママチさんから見て、何が違ったんだと思いますか?
ヤママチ:うーん……なんでしょうね……?
岩淵:ちょっと先にいいですか? アヤさん(アヤ・エイトプリンス)の脱退が決まったときに、東京に残っていたBiSのメンバーは「はあー……」みたいな感じだったんですけど、カミヤさん(カミヤサキ/GANG PARADE)だけ心配して泣いてたんです。だから合流したときに、アヤさんに「大丈夫だった?」って言ってたんですけど、そういうのがBiSの人たちはなかったなーと。
渡辺:何が違うのかって言うと、圧倒的に違うのは、BiSが好きじゃないんですよ。ギャンパレは「ギャンパレ=自分」なんですよ。BiSHは「自分たちがBiSHだ」って思ってるし、第3期BiSも「自分たちがBiSだ」ってすごくちゃんと思えている。僕も初期BiSをやってるときは「BiSのためだったら、俺、死んでもいい」と思ってたから、そういう覚悟がたぶんないと思うんですよ。とにかく俺が一番悲しかったのは、俺が一番好きなBiSなのにも関わらず、彼女たちがすごい軽いものとして扱っていたこと。それが許せなかった。
——ヤママチさんとしては、この映画を見て、あのオーディションってどういうものだったと思いますか?
ヤママチ:オーディションというものは候補生があるから成り立つもので、本当はBiSの物語にはならないはずだなって思って。そう考えると、第2期BiSって「BiS」っていう存在ではなかったのかもしれないというのはすごい思いました。
——この映画になった一連の出来事を経て、エンタメ業界で生きていくための教訓みたいなものはあるでしょうか?
渡辺:あるんじゃないんですか? BiSの違う未来としては、松隈ケンタ(サウンド・プロデューサー)が「いや、俺は曲書こうかな」って言ったり、外林健太(カメラマン、衣装デザイナー)が「やっぱり俺はBiS好きだから撮るよ」って言ったりするのもあったと思うんですよ。でも、自分のことしか考えられてないと、周囲に好きになってもらうこともできなくなる。一番近くにいる大人たちも諦めちゃったんですよ。結局、お客さんがいるいないは関係ないんですよね。一番人気だろうがなんだろうが、一番近くの大人たちに好かれないと、結局アイドルはやっていけないと思います。まぁ普通の大人たちはそこまで言わないで、ニコニコしながら「ちょっといろいろあってねー」とか言いながらなぁなぁに終わらしていくんだと思うんですけど。
ヤママチ:やっぱり周りの方に好かれるっていうのは、すごい難しいことではあるんですけど、一番重要だって、活動していくなかでずっと思ってきたし、渡辺さんからも常々言っていただいてきたんです。そこは映画を通して改めて感じることができました。
——オーディションの期間を通して、何か気づいたことはありますか?
ヤママチ:思っていた以上にメンバーに頼りまくってたなって。合宿で自分が「こうしたほうがいいんだよ」って候補生にアドバイスするっていうのも、ギャンパレで活動していたら私はサキちゃんに任せていた部分が多かったので。
——岩淵さんは、このオーディションを撮ってみて感じたことはあるでしょうか?
岩淵:WACKっていうものが巨大になっていって、今年の合宿はスタッフ投票とかもあったんですよ。渡辺さんが「下の者に判断を委ねていかなきゃいけないんですね」っていう話を最初の頃はしていて、「そういう話になるのかな?」とか思っていたんですよ。でも、結局一番大事なところは渡辺さんが判断はしていかなきゃいけないんだなって。そういう決断をみんなしていて、決断できてない人はあまり良い結果にならなかったのかなーと。
——渡辺さんから見て、この映画はWACKの歴史の中でどういう位置づけになると思いますか?
渡辺:今まで作ってきた中で、間違いなく一番面白い映画。最後のメンバーの「なんか私たち誰にも好かれてなくない?」という言葉は、自分に原因を求めてないじゃないですか。WACKは、嫌われながらも好かれる努力をしていくし、振り向いてもらうためには変なこともしていかないといけない。だから僕としては、見るたびに自分も気を引き締めなきゃなって。
——ヤママチさんから見て、この映画の中にWACKの精神性みたいなものはあると思います?
ヤママチ:あると思います。渡辺さんが話してくださっていることがすべてだと思うので。
渡辺:僕の発言の精神論的な部分は変わらないんですよ。嘘はいっぱいつきますけど(笑)。
(取材・文=宗像明将/写真=池村隆司)
■公開情報
『IDOL-あゝ無情-』
11月1日(金)よりテアトル新宿、11月8日(金)よりシネ・リーブル梅田、11月9日(土)よりシネマスコーレにて公開
監督・編集:岩淵弘樹
プロデューサー:渡辺淳之介
撮影:青柳拓、浅井一仁、今田哲史、岩淵弘樹、エリザベス宮地、小峰克彦、白鳥勇輝、中村桃子、丹羽貴幸、野崎あんにん、バクシーシ山下、八木咲、柳田裕之、山崎夏樹
出演:オーディション候補生、BiSH、BiS、GANG PARADE、EMPiRE、WAgg
配給:松竹メディア事業部
2019/85分/ヴィスタサイズ
(c)WACK INC.
公式サイト:http://aa-mujou-movie.jp
公式Twitter:@aa_mujou_movie
WACK公式サイト:https://www.wack.jp