ブラッド・ピットが体現する“白人男性”の光と影 ハリウッドを変える力を持つ唯一無二のスターへ

ジェニファー・アニストンとプランBを創設

 さて、ピットは、プロデューサーとしても『マネーボール』、『それでも夜は明ける』(2013)、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)の3作でアカデミー賞作品賞にノミネートされたほどの実力の持ち主だ。

 2001年にブラッド・ピット、ジェニファー・アニストンとプロデューサーのブラッド・グレイが創立した映画制作会社「プランB」は、2005年にピットとアニストンが離婚し、グレイがパラマウント・ピクチャーズのCEOに就任してからはピットが単独オーナーとなり、映画プロデューサーであるディード・ガードナーとジェレミー・クライナーが共同社長に加わった。

 ピットが出演した『トロイ』(2004)、『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007) 、『ツリー・オブ・ライフ』(2011) 、『ジャッキー・コーガン』(2012) 、『ワールド・ウォーZ』(2013)、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』の他にも、アカデミー賞作品賞を受賞した『それでも夜は明ける』と『ムーンライト 』(2016)、近年ではアカデミー賞8部門ノミネートを果たしたクリスチャン・ベール主演『バイス』(2018)やティモシー・シャラメ主演作『ビューティフル・ボーイ』(2018)など、話題作に事欠かない。

 ついでながら、「Plan B」とは英語で、一番目のプランAが上手くいかなかったときに使う二番目のプランBという意味があり、このネーミングもなかなか興味深い。

#OscarsSoWhiteに抗ったプランB

 #OscarsSoWhiteがSNS上を騒がせ始めたのは2015年。2012年頃からハリウッドにおけるダイバーシティの欠如は議論され始めていたが、2015年になってもアカデミー賞の俳優部門にノミネートされたのが全員白人だったことに抗議したハッシュタグである。ところが、2016年の候補者もこれまた全員白人。これを受けてスパイク・リー監督は自身のインスタグラムにアカデミー賞をボイコットすることを表明した。

 そして2017年、プランBが制作した『ムーンライト』が『ラ・ラ・ランド』を押しのけて作品賞に輝いた出来事は記憶に新しいだろう。とはいえ、アカデミー賞委員会のマジョリティはいまだに白人男性。ハリウッドの資本と権力を握るのは白人男性だからこそ、メインストリーム映画の主人公は白人男性が多く、大手スタジオは安定した利益を得るために白人男性が主役のマーベル・シネマティック・ユニバースやDCエクステンデッド・ユニバースを展開して、過去のヒット作の焼き直しを続けているといえよう。

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