清原果耶が『なつぞら』で担う、広瀬すずと真逆のリアリティ “ライオンの子”からの成長を辿る

『なつぞら』清原果耶の演技力の源を探る

 広瀬すずが演じる奥原なつが作るアニメーションは千遥に未来を見せ、清原果耶が演じる千遥が作る天丼(それはなつのアニメに対応する千遥の「作品」として描かれているのだろう)はなつに過去を思い出させる。ポップなカルチャーの力と重いリアリティの力。広瀬すずと清原果耶は、正反対のお互いの役割を互いによく演じ分けていた。また、『なつぞら』の出演者の中では富田望生が、Netflixの配信作品『宇宙を駆けるよだか』で清原果耶と魂と身体が入れ替わる役を演じている。今回のなつぞらでは富田望生と清原果耶の二人が顔を合わせるシーンがラストまでにあるかは不明だが、『宇宙を駆けるよだか』は富田望生の演技力を知らしめた出世作でもあり、今後も二人の女優は何度も作品を共にするだろう。

連続テレビ小説『なつぞら』(写真提供=NHK)

 清原果耶の出演作を見ると、ラブコメやホラーといった十代の新人女優が出演しやすい作品よりも、大作や本格人間ドラマへの出演が多い。女優デビューからして朝の連続テレビ小説『あさが来た』から始まっていて、キャリアの初期から周囲にも大器として期待されているのがよくわかる。清原果耶の経歴で興味深いのは「本来はPerfumeに憧れる歌手志望の少女で、歌とダンスのスクールに通ってきた」というところで、小1からクラシックバレエ、小5からは劇団で本格的なレッスンを受けてきた。『ちはやふる ー結びー』で演じた我妻伊織がそうであるように、いわば幼少期から英才教育を受けてきた本格派なのだ。

 百獣の王、ライオンの娘のように鮮烈にデビューした彼女の本領はまだまだこれから発揮されるのだろう。そして『ちはやふる ー結びー』で小泉徳宏監督が描いたように(小泉監督という人は相当な手練れで、原作付きの作品でありながら出演者に当て描きしたような描写を加えるだけではなく、彼らの未来への予想やアドバイスまでそこに込めているような所がある)、広瀬すずや松岡茉優という先輩女優と競い合うにぎやかな未来が広がっているはずだ。

 最後に、清原果耶は映画『デイアンドナイト』ではRADWIMPSの野田洋次郎の楽曲提供
を受け、劇中の「大野奈々」名義で「気まぐれ雲」という楽曲を配信限定リリースしている。清原果耶名義ではないので『なつぞら』で知った人は検索しても知らない場合が多いのだが、さすがの歌唱力である。もう若手女優として完全に軌道に乗っているので歌やダンスのスキルを見せるような寄り道はあまりできないのかもしれないが、眠らせてしまうには英才教育で培ってきたスキルがあまりにも惜しい。高校卒業後、本格的に活動開始の際にはぜひそちらのスキルも見せてほしいと思う。

■CDB
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■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮、清原翔/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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