『なつぞら』貫地谷しほり演じる麻子の幸せを願う 女性たちの生き方が描かれた第16週

『なつぞら』女性たちの生き方が描かれた第16週

 『なつぞら』(NHK総合)第16週「なつよ、恋の季節が来た」は、多くの恋愛と女性の生き方、結婚観が描かれる。

 物語の中心にいるのは、北海道から彼氏の高山(須藤蓮)と駆け落ちをしてきた夕見子(福地桃子)。なんでも言い合える本物以上の姉妹であるなつ(広瀬すず)に、「結婚する気はあるのかないのか。認めるのかとか、そういうものから自由になるため」「愛って志よ」と相変わらずの融通無碍な考え方を語る。ともすれば偉そうに見えてしまう夕見子だが、見方を変えれば嘘のない素直な女性でもある。子供の頃から一緒にいるなつには、少なくとも夕見子の姿はそう映っていたのだ。自由を求めた夕見子と跡取りになることを諦めきれなかった高山の恋は、泰樹(草刈正雄)による“抹殺”パンチで幕を閉じることとなる。

 なつと恋の予感を漂わせている坂場(中川大志)は、風車での飲み会にて酔った勢いで「き……君の愛ってなんですか?」と聞いたり、漫画映画に携わる者として「一生をかけてもあなたと作りたいんです」となつに誓ったりと、大胆なセリフが目立つようになってきた。なつもそのアンサーとも取れる「もっとイッキュウさんと作りたいです」と返しており、関係性が仕事の仲間から恋人に変わってもなんらおかしくない雰囲気だ。

 ほかにも、雪次郎(山田裕貴)の蘭子(鈴木杏樹)への憧れに似た好意、咲太郎(岡田将生)を待つのをやめたレミ子(藤本沙紀)と結婚を決めた佐知子(水谷果穂)、神地(染谷将太)からの好意にツンデレな態度で返す茜(渡辺麻友)と、多くの恋模様が描かれる中、第16週のラストでなつたちに告げられるのが、麻子(貫地谷しほり)からの「私、結婚するの。やっと白馬に乗った王子様を見つけました」というまさかの報告と、アニメーターを退く決心だ。

 東洋動画のスゴ腕アニメーターとして仲(井浦新)をサポートする麻子は、なつに眠るアニメーターの才能をいち早く評価していた人物。彩色担当から晴れてアニメーターになったなつに、麻子はまだまだ無愛想だった。なつが作画課に移り初めて制作に携わったのが長編漫画映画『わんぱく牛若丸』。キャラクター募集が決まり、なつは麻子に参加するか聞くが、そこで返ってくるのが「あなた期待されてると思ってるの?」という一言。お昼休み、中庭で茜とパンを頬張りながら仕事と結婚の両立について話すなつに、麻子は「会社から辞めないでくれって引き止められるようなアニメーターになればいいんじゃない、だったら」「期待してないけど」と、常に厳しい意見をぶつけていた。

 そんな麻子の態度に変化が見えてくるのが、なつと共に原画を任せられる短編映画『ヘンゼルとグレーテル』での制作。演出には坂場が参加し、企画のアイデアは実質なつと坂場の2人によって進んでいく。新人アニメーターとして参入する神地は、知的でいて情熱的なアイデアをどんどん出し、絵コンテ、さらには原画にも手を出すこととなる。その一方で、若き才能を前に焦りや劣等感を滲み出していたのが麻子だ。第16週の第92回で麻子は制作の方針に疑問を呈している仲を前に「坂場さんと奥原さんの熱意は本物です」と認めながら、「この作品だけは何があっても最後までやらせてください。みんなで決めた通りに作らせてください」と頼み込んでいた。今思えば、この時から麻子は『ヘンゼルとグレーテル』が、自分にとって最後の作品になることを決めていたことになる。第91回では、夕見子の動向を心配する麻子がなつに「女にとっては、結婚も志でしょう。するかしないかも含めて、女は何を一番に考えるかで、生き方が決まってしまうんだから」と話す一幕もある。

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