『ジョナサン』監督が語る、アンセル・エルゴートの将来性 「まだまだ伸びしろがあると思う」

『ジョナサン』ビル・オリバー監督が語る

「誰もが共感できるであろう基本的な人間の欲求を核にしたかった」

ーー本作のテーマである「他者との繋がり」は現代社会においても非常に重要なトピックです。本作を手がける上で、そういった社会的な視点もあったのでしょうか?

オリバー:意図的に社会的メッセージを入れ込むということはなかったんだけど、ストーリーを書いてく中で、必然的に現代社会において意味深いテーマが含まれていたかもね。あとは、誰もが共感できるであろう基本的な人間の欲求を核にしたいという部分があったんだ。つまりそれは、アンセルが演じるジョナサンとジョンのある意味でのラブストーリーであったと考えているよ。同じ体に生存していながらも、決して触れ合うことはできない。だからこそ、何らかの手段で繋がりたい。そういった気持ちがより強まっていく。そういったことを描いていく中で、テーマ上に今の社会的な風潮というものにもリンクしていく部分が自然と出てきたんじゃないかな。

ーーとても静かな語り口ながら、どんどん引き込まれる展開、スタイリッシュな映像に魅せられました。監督自身はどのような作品や監督から影響を受けてきたのでしょうか? 特に今回の『ジョナサン』において、意識したり参考にしたりアイデアの元になった作品があれば教えてください。

オリバー:この作品は、SF映画ではあるんだけど人間ドラマに近く、感情面においてもエモーショナルな部分が強いから、雰囲気を持ったSF映画ということで、『わたしを離さないで』(2010年)や『メッセージ』(2016年)、『ブレードランナー』(1982年)を参考にしたかな。あとは二重人格とか双子とかそういったテーマを扱った映画もたくさん観たね。さらには都会の喧騒の中で孤独を抱えながらも社会のはみ出し者で、なにかそのなかでも世間に属したい、繋がりたいといったような渇望を抱えている男を主人公にした映画という点では、『タクシードライバー』(1976年)とか『カンバセーション…盗聴…』(1974年)などの70年代の映画、あとはヨルゴス・ランティモス監督が手がける一風変わったユーモアのセンスのある作品も参考にしたよ。もちろん心理サスペンスという意味では、ヒッチコックであるとか、ビジュアル的な面ではキューブリックの映画にも影響を受けているかな。

ーー最後に、今後手がける予定の作品や挑戦したいジャンルなどがあれば教えてください。

オリバー:色んなジャンルに興味があるし、基本的にドラマティックな内容のストーリーに惹かれるんだけど、特にサイコ・ホラーみたいなものを撮ってみたいかな。あと意外かもしれないけど、ミュージカルも好きだから、いつか挑戦してみたいと思っているよ。あとはテーマ的には、今回の作品でも触れているけど、様々な家族の形というものに非常に興味があって、実際の血縁ではなくても、人が家族を作り上げていく過程にすごく興味があるんだ。自分の中で描いてきたのは、何かしらの過渡期を迎えている人物だったり、何かを通して成長するということ。今回はジョナサンがとても若いので、青春モノといっても過言ではないと思うけど、成長の物語にとても興味を惹かれる。そして今、次回作として取り組んでいる作品も、離婚調停中の主人公がそれを通して成長するという物語を描いているんだ。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『ジョナサン -ふたつの顔の男-』
新宿シネマカリテほかにて公開中
監督:ビル・オリバー
出演:アンセル・エルゴート、スーキー・ウォーターハウス、マット・ボマー、パトリシア・クラークソン
配給:プレシディオ
協力:ムービープラス
2018/アメリカ/英語/カラー/95分/シネマスコープ/原題:Jonathan
(c)2018 Jonathan Productions, Inc. All Rights Reserved
公式サイト:jonathan-movie.jp

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